2020.03.16

【基礎知識 vol.13】ムーンフェイズとは|腕時計の基礎知識・基礎用語

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「時計の中に夜空を楽しむ!ムーンフェイズの魅力とは|腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。

腕時計初心者の方向けに、毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくシリーズ。今回は、『ムーンフェイズ』について、お伝えしていきます。ムーンフェイズというのは、月の満ち欠けを文字盤に表示させる機能のこと。ムーンフェイズのデザインや機械構造、誕生背景などから、その魅力をお伝えしていこうと思います。

目次

 

ムーンフェイズってどんなもの?

さて、ではまずは、ムーンフェイズってどんなもの?ということから、簡単にご紹介していきますね。冒頭でも触れた通り、ムーンフェイズというのは、月の満ち欠けを表示する機能のこと。満月、上弦、下弦といった、月の形を示す機能です。

時計としての見た目はご覧の通り。こちらはパテック・フィリップの5396Gという時計。文字盤6時位置に専用の窓が設けられ、そこに月と夜空が顔を出すという仕掛けになっています。

ムーンフェイズの機械構造

仕組みは、いたってシンプル。月が描かれた円盤が回転し、月相を表示するというもの。円盤は、時分やカレンダーと同じように、ゼンマイからの動力を一定のタイミングで受けて動きます。月や夜空の絵柄が、日々アニメーションにように動く様は、目で見て楽しむこともできますね。

ムーンフェイズはなぜ誕生したのか?

では続いて、ムーンフェイズがどう誕生して、どう進化してきたのか。その歴史について、お話していきます。ムーンフェイズの誕生ですが、実は、この時代のこの人が作ったという記録がありません。置時計としては、16世紀に既に組み込まれたものがあったそうです。

その後、18世紀に天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲによって小型化がなされ、懐中時計に搭載されましたが、その背景には、15世紀~18世紀にかけての大航海時代がありました。

大航海時代に発明された時計というと、マリン・クロノメーターが有名です。マリン・クロノメーターというのは、18世紀に発明された船用の高精度ウォッチのこと。自船の経度を知るために使われました。今でいうGPSのような存在ですね。自船の位置を正確に知り、安全に航海するために必要不可欠なものでした。

そしてそれと同じく、安全な航海に欠かせないもの。それが、潮の満ち引きを知るということ。潮の動きは、月の位置によって決まりますが、天気が悪いと月が見えない。そこで、ムーンフェイズを有する時計を用いて、確認する必要があったというわけです。

ブレゲ時代から変わらない基本構造

18世紀、ブレゲによって小型化されたムーンフェイズの基本構造は、今現在の腕時計においても、多く使用されています。その構造は、59日でムーンフェイズの円盤が一周するというもの。

月の周期は29日と12時間44分2.8秒です。ということは、大体2周期で59日だよねということで、それに合わせて円盤が1周する作りになっています。

そこに2つの月を描き、半分隠すか、マーカーを付けるなどして、読み取らせるのが基本構造です。

長年進化せずに変わっていないということ。特別変わる必要がなかった機能ということですが、言い方を変えれば、古典的な時計の面白さを感じことができるということかと。これはムーンフェイズが持つ、一つの魅力なのではないでしょうか。

ムーンフェイズの精度を追い求めた時計

しかし、すべての時計のムーンフェイズが進化していないかというと、そんなことはありません。2周期で59日という、ブレゲが作った古典的なムーンフェイズ。それでも十分機能していたわけですが、、、いやいや、もっと精度良くしましょうよ!と。

月の周期は29日と12時間44分2.8秒じゃないですか。2周期で59日とするならば、2周期ごとに88分5.6秒ずつズレていく。わずかなズレかもしれないが、3年経つとどうだ!丸1日ズレるじゃないか!と。ということで、性能面で進化を遂げた時計も存在します。こちらの2本は、ムーンフェイズの精度をとことん追求したモデルです。

画像左は、A.ランゲ&ゾーネ サクソニア ムーンフェイズ122年半で1日のズレしか生じない、高精度ムーンフェイズを搭載。素晴らしい精度を実現しながらも、月の表示窓は小ぶり。主張しないところに、職人魂を感じます。

そして右は、IWC ダヴィンチ パーペチュアル・カレンダー クロノグラフこちらは、さらに高精度。なんと!577年半で1日のズレしか生じないという驚異的なスペック!永久カレンダーとクロノグラフも装備しており、秒単位から年単位にまで、とにかく時間というものにこだわった作りが魅力です。

ただ、実際そこまで精度を追及されたところで、機能としてムーンフェイズを必要としているユーザーがいるのかというと、まあいないでしょうね。大航海時代なら必要なことだったかと思いますが、、、いや、さすがに122年も海の上ということはないので、その時代でも不要かも。笑

アート作品としての進化

ということで今となっては、ムーンフェイズは、機能よりも装飾として楽しむ人の方が、圧倒的に多いものと思います。なので、この2本のように、アート作品のような進化を遂げたモデルも存在します。

画像左は、アーノルド&サン ムーン・アベンチュリンブルーの砂金石を使用した文字盤は星空のごとく。18Kレッドゴールド製の大きな月が顔を覗かせる、ダイナミックなデザイン。地球を飛び出し、宇宙空間で月を眺めているような、そんな錯覚が楽しめるモデルです。

そして右は、エルメス アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌモデル名を直訳すると、ムーンアーチの時計。メイン文字盤に月を描き、その上に時間と日付を表示する2つのスモールダイヤルを配置。ムーンフェイズ側ではなく、スモールダイヤル側を可動式にするという、なんとも斬新な仕掛けが面白い時計です。また、モノクロームのデザインは、まるでフィルム映画の中にいるような、不思議な感覚を楽しませてくれます。

まとめ

以上、「ムーンフェイズ」についての基礎知識、お届け致しました。

現代はほとんど必要とする機会がないであろうムーンフェイズ。それでもなお現代に残り、人気を得ている理由は、18世紀から変わらない古典的な面白さがあるから。そして、モダナイズという点においても、精度とアート、2つの面で楽しめるということかと思います。

また、ムーンフェイズのゆっくりとした時の流れ。これもいいですよね。分単位で忙しく生きる私たちに、一時の余裕を感じさせてくれるものだと思います。気になった方はぜひ時計店で、お気に入りの一本、探してみてください。