2020.05.08

【基礎知識 vol.16】世界三大時計とは|腕時計の基礎知識・基礎用語

更新
三大時計

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「【世界三大時計】雲上ブランドとは? |腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。

腕時計初心者の方向けに、毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくシリーズ。今回は、『3大ブランド』について、お伝えしていきます。

腕時計における3大ブランドは、パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲ。この3つです。手が届かない存在という意味で、「雲上ブランド」と表現することもありますね。

目次

今回の記事では、この3つがそれぞれどんなブランドなのか。そして、なぜ3大と呼ばれているのかについて、ご紹介して参ります。

↓ 動画はこちら。

パテック・フィリップの概要

では、まずは3大ブランドについて、それぞれどんなブランドなのか見ていきましょう。といっても、ここでは多くを伝えることはできませんので、概要のみとさせていただきます。

引用:パテック・フィリップ公式 https://www.patek.com/ja/

ではまずは、パテック・フィリップから。創業は1839年のスイス・ジュネーブ。

創業時より『世界最高の時計を作る』という理念のもと、約180年に渡り、多くの名作を世に送り出してきたブランドです。

愛用者には、ローマ教皇やヴィクトリア女王、アインシュタインなど、多くの偉人が名を連ねる名門中の名門。

現在、誰に聞いても、世界最高のブランドということに異論がない。まさにトップオブトップ。至宝級と言われるブランドです。

ヴァシュロン・コンスタンタンの概要

続いて、ヴァシュロン・コンスタンタン。創業は3ブランド中、というか現存するブランド中でも最も古い部類に入る1755年のスイス・ジュネーブ。

創業から約260年もの間、一度も途切れることなく時計作りを行ってきた、世界最古の時計ブランドです。

引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式 https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

マルタ十字をトレードマークにしており、時計のデザインにおいても、随所にマルタ十字を元にした意匠が見られることが特徴。そこには、「ONE OF NOT MANY (少数精鋭)」というメッセージが込められています。

2019年の新作発表時には、「美しい高級時計作り」というテーマを掲げ、Connoisseurと呼ばれる目利き・愛好家向けのコレクションを発表。ここからも、万人にウケる時計ではなく、時計をわかっている少数の人に向けに、その実力を呈しているブランドであることが分かります。

オーデマ・ピゲの概要

続いて、オーデマ・ピゲ。創業は1875年スイス・ジュウ渓谷・ル ブラッシュ。

創業時より、時刻を音で表すリピーターウォッチ、クロノグラフ、アストロノミカルウォッチなどの複雑機構を得意とし、多くの「世界初」を生み出してきました。

オーデマ002

引用:オーデマ・ピゲ公式 https://www.audemarspiguet.com/ja/

1972年に発表したロイヤルオークという有名な時計も、世界初の称号を得た一つですね。それまでゴールド製が当たり前だった時代に、初めてステンレススチールを採用。当時まだ工業材料でしかなかったステンレスを、貴金属並みに磨き上げ、ラグジュアリースポーツという新たなジャンルを生み出しました。

ずっと創業者ファミリーでの経営を続けており、スイスの伝統的な時計作りを守ることにも積極的に取り組んでいる、由緒正しきブランドです。

3大ブランドはなぜ3大ブランドなのか

この3ブランドに、ブレゲとA.ランゲ&ゾーネが加わると5大ブランド。さらにジャガー・ルクルトを加えて、6大という場合もあります。

ちなみに、知名度が高いロレックスやオメガは、6大にも入りません。なぜかというと、、、その理由についてはこの後触れていきますね。

では、なぜこの3つが3大ブランドなのかということについてですが、、、明確にこうだから!という定義はありません。

長い時計史の中で、いつしかそう呼ばれるようになったんでしょうけど、それがいつからなのか、誰が言い出したのか、その辺りは調べても答えが見つかりませんでした。

しかし、定義はないものの、調べていく中で3ブランドに共通することが4つほどあることに気付きました。おそらくそれらが3大と呼ばれる所以なのではないかと思うわけです。

その共通点、こちらの4つです。

・世界最高峰の技術を持っている
・王侯貴族や富裕層向けに一点ものを提供
・歴史が途絶えていない
・時計業界の発展と保護に貢献

ひとつずつ、見ていきましょう。

世界最高峰の技術

まず1つ目の共通点は、世界最高峰の技術を持っているということ。これは言わずもがなですね。

パテックにしても、ヴァシュロンにしても、オーデマにしても。複雑機構を搭載した時計作りに長けており、なおかつ小型化の技術も持っています。

さらには、時計を美しく見せるデザインや仕上げ加工など、審美技術も優れています。

王侯貴族や富裕層向けに一点ものを提供

2つ目は、王族や貴族向けに一点ものを提供していた歴史があること。

今でこそ、お店に行けば買うことが出来ますが、3ブランドとも元々は身分の高い方たち向けに、一点ものを作っていたブランドです。つまり、一般市民向けの実用時計ブランドではないということですね。

パテック003

引用:パテック・フィリップ公式 https://www.patek.com/ja/

例えば、先にも触れた通り、パテック・フィリップの顧客リストには、歴史的偉人が多く名を連ねています。創業者のパテックさんも元将校ですから、自らも身分の高い人物でした。

3ブランド中、最も歴史が浅いオーデマ・ピゲにおいても、時計にモデル名が用いられ、1Lot.複数個という作り方を始めたのは、1940年代末以降から。それまでは、複雑機構を中心に、一点もののみを作るブランドでした。

また、5大ブランドブレゲの創業者ルイ・ブレゲは、フランス王族御用達の時計師。A.ランゲ&ゾーネの創業者アドルフ・ランゲは、ドイツ・ザクセン王国の宮廷時計師です。

ロレックスやオメガが5大に入り込めない理由、なんとなくお察しいただけたのではないでしょうか。いくら知名度が高くても、一般市民向けの時計を作っているメーカーでは、ここに入り込むことは難しいのですね。

歴史が途絶えていない

続いて、3つ目の共通点は、歴史が途絶えていないこと。

歴史が深いブランドで、今現在もその名が残るものには、実は2パターンあります。1つは、途絶えずに継続したパターン。もう1つは、一度途絶えた後、後世の手によって復活したパターン。

ブランパン、ファーブル・ルーバ、ペルレなど。1800年代初期までに創業したブランドの多くは、後に復活したパターンです。5大ブランドのA.ランゲ&ゾーネですら、戦火によって一度消失しています。ブレゲも、一時は休眠状態になり、現代の名工たちの手によって復活した経緯があります。

オーデマ004

引用:オーデマ・ピゲ公式 https://www.audemarspiguet.com/ja/

では、3大ブランドはどうか。

パテック・フィリップは、第一次世界大戦とその後の世界恐慌で、一度は存続が危ぶまれました。しかし、当時文字盤の製造を担当していたスターン社の協力によって窮地を乗り越え、現在も独立ブランドとして、世界最高の時計作りを行っています。

ヴァシュロン・コンスタンタンは現在、リシュモングループに属していますが、時計作りのコンセプトはそのまま。創業時から変わらない時計作りを継続しています。

オーデマ・ピゲは、創業時からずっとオーデマ家とピゲ家によって経営が継続。リシュモングループと深い交流を持ち、分業によるスイスの伝統的な時計作りを続けています。

多くのブランドを消失または休眠に追いやった、戦争・恐慌・産業革命・クォーツショック。3ブランドとも、これらを乗り越えてきたということですね。ただただ、尊敬するばかりです。

時計業界の発展と保護に貢献

さて、最後の共通点ですが、3ブランドとも、時計業界の発展と保護に大きく貢献しているということです。

これが一番大事な部分かもしれませんね。要するに、ブランドやグループのことだけじゃなく、もっと俯瞰して、時計業界全体のことをしっかり見ている。

分かりやすい例でいうと、ジュネーブシールという認証制度があります。これは、「全ての部品製造及び組み立て作業がジュネーブ州内で行わなれた」ことを証明するもの。

これを積極的に導入しているのが、ヴァシュロン・コンスタンタンです。つまり、ヴァシュロンの時計は、純ジュネーブ産。ジュネーブの時計産業を、しっかり守っていこうという気概があるわけです。

ジュネーブシール

引用:ヴァシュロン・コンスタンタン公式 https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

オーデマ・ピゲの時計作りも、思いは同じですね。ジュウ渓谷の伝統的な分業による時計作り。これを守っていこうというのが、オーデマ・ピゲの考え方です。

クォーツウォッチが台頭する中、ロイヤルオークという時計にチャレンジし、スイスの機械式スポーツ時計の地位を揺るぎないものにしたことも、大きな功績ですね。

そして、パテック・フィリップ。このブランドは、永久修理を約束しています。パテック・フィリップのものであれば、いつの時代の時計であろうと修理しますと。

これは、今後どんな風に時代が変わろうとも、世界最高と呼ばれる技術はしっかりと伝承していきますという、業界へのコミットメントなのではないでしょうか。

まとめ

といったところで、本日は「3大ブランド」についての基礎知識、お届け致しました。

今回、私なりに調べた共通点で、3大ブランドたる所以を整理してみたわけですが、いかがでしたでしょうか。

いやいや、こういう理由で3大なんだよ!とか、こんな考察はどうですか?みたいなご意見、頂けると嬉しいです。