※この記事はYoutubeチャンネル・ウォッチ買取応援団にアップされた【アクアノートの魅力!王者パテックが考えるノーチラスとは異なる成功ストーリーとは】を文字起こししたものです。
本日は、パテック・フィリップ アクアノートのご紹介です。カジュアルなデザインで、若いユーザーにも人気が高いモデル。初の雲上ブランド購入に、この時計を目標にされている方も多いのではないでしょうか。
しかし。今となっては、兄貴分であるノーチラスに次ぐ人気を誇っているものの、1997年発売当初はまったく売れなかったとか。
時計ブランドの王者パテックは、いかにしてアクアノートをヒットモデルに仕立てていったのか。世界最高のブランドによる試行錯誤のストーリーと、その過程で切り拓いた将来性について、アクアノートの魅力をたっぷりとお伝えしていきたいと思います。
目次
- 現行モデル アクアノート5167の基本情報
- ノーチラスとの大きな違いはケース構造
- 単なる弟分に終わらせない開発戦略
- 発売当初はまったく売れなかった
- 大型化とシースルーバックの採用
- 二作目で行われたもう一つのモダナイズ
- 現代そして将来の可能性
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現行モデル アクアノート5167の基本情報
まずはアクアノート現行モデルの基本情報から、簡単にお伝えしていきます。アクアノートの特徴は、何と言っても防水性に優れた8角形のケース。そこにトロピカルラバーと呼ばれる丈夫なラバーストラップが取り付けられ、スポーティなデザインにまとめられています。
現行モデルとしてラインナップされているのは、メンズ・レディース合わせて16種類。ステンレススチール製の3針モデルから、ゴールド製の複雑機構モデル、そしてダイヤモンド宝飾モデルまで。幅広く展開されています。
ノーチラスとの大きな違いはケース構造
アクアノートの誕生は、1997年にまで遡ります。90年代のパテック・フィリップは、若者向けのラインナップ強化を図っていました。
ドレスウォッチ・カラトラバに黒文字盤のバリエーションを追加したり、コンプリケーションシリーズに太いベゼルを持つモデルを追加したり。そしてその流れから、ノーチラスの弟分として取り組んだが、アクアノートの開発でした。
若い世代向けに作るにあたり、パテック・フィリップがまず取り組んだのはケースの開発でした。
1976年に登場した兄貴分ノーチラスのケース構造は、2ピース構造。ミドルケースとケースバックが一体型になっており、そこに風防とベゼルをはめ込んで、固定するというもの。
耳と呼ばれるケースサイドの留め具部分。ここがノーチラスが持つケース構造の特徴的な部分です。ノーチラスがこの構造を採用したのは、時計界のピカソと呼ばれるデザイナー ジェラルド・ジェンタが書きあげた『薄型かつブレスレット一体型のデザイン』を実現するためでした。
単なる弟分に終わらせないアクアノート開発戦略
しかし、アクアノートに対しては、この構造を取り入れず。
なぜかというと、成形に高額なコストが掛かってしまい、モデルとして完成させた際には、とても若い層が買える価格ではなくなってしまうため。そして、ノーチラスの弱点である、メンテナンス性の悪さをクリアするため。
パテック・フィリップが考えていたのは、単にノーチラスをカジュアルなものにするだけでなく、あくまでアクアノートという独自のシリーズを作ろうと思っていたんですね。
結果、試行錯誤の末にたどり着いたのは、2ピース構造ということは変えず、一体化する部分を変更するという方法でした。
ミドルケースとケースバックが一体型にされたノーチラスに対し、アクアノートが採用した構造は、ミドルケースとベゼルを一体化し、ねじ込み式のケースバックで閉じるという方法。そうすることで、ノーチラス並みの薄さと防水性能を保ちながらも、ケース成形のコストを削減。裏蓋を開ければムーブメントが触れるので、メンテナンスも容易に。
加えて、ブレス一体型ではなく、ラグを採用したことで、レザー製やラバー製のストラップの装着も可能に。こうしてアクアノートは、ノーチラスとは違った将来性を持つモデルとして、発売に至ります。
発売当初はまったく売れなかった
がしかし、1997年発売当初は全く売れず。初代モデルRef.5060は発売から1年であっさり生産終了となってしまいます。
ノーチラスでさえ、まだ今のような人気モデルではなかった時代ですが、それにしても早すぎる打ち切り。理由はなんだったかというと、時代潮流に合っていなかったということ。
90年代末と言えば、デカ厚ウォッチブームが盛り上がり始めた時代。90年発売のブレゲ マリーンから始まったサイズアップの流れは、オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク オフショア、パネライ ラジオミールなどによって加速。2000年代には、ウブロ ビッグバンが登場したことで、本格的なブームとなっていきました。
40mmを超える大判サイズの時計がブームを牽引した時代。初代アクアノートの35.6mm径というケースサイズは、当時のニーズに対しては小さすぎた。王者パテックのブランド力を持ってしても、時代の波には勝てなかったんですね。
大型化とシースルーバックの採用
さて、一作目の失敗から教訓を得たアクアノート。1998年には、早々に二作目Ref.5065を発売します。
ケース径を38.8mmにサイズアップし、中の機械が見えるよう、ケースバックをサファイアクリスタル製に変更。見事にモダナイズされての再登場となりました。
結果、二作目は売れる時計になったものの、、、買い求めたのは、若い層ではなく年配層。余暇にスポーツを楽しむ際に付ける、オフ用ウォッチとして売れていきました。
ターゲットは異なれど、まあ売れたので結果オーライ。ですが、パテック・フィリップは、そこで妥協するようなブランドじゃありません。
金無垢モデルの追加など、年配層のオフ用ニーズに応えることは続けながらも、更なる市場開拓も狙っていました。
二作目で行われたもう一つのモダナイズ
実はアクアノート、二作目はもう一つのバリエーションが存在していました。ケース径は初代と同じ35.6mmと小ぶりながらも、展開の幅を広げたモデルRef.5066系です。
Ref.5066で行われた工夫。それは、クォーツ式ムーブメントを搭載したモデルの追加でした。金無垢ケースを使用し、ベゼルには豪華なダイヤモンド宝飾。しかしクォーツ式なのでリーズナブル。
ということで、このモデルが新たにに獲得したユーザー層は女性。やはりオフを楽しむための時計として、ヒット作となりました。
現代そして将来|アクアノートの可能性
以降、誕生から10周年を迎えた2007年には、全面的に刷新され、ケース構造は2ピースから3ピースに変更。メンズモデルのケースサイズは、40mm以上へとサイズアップされました。
そして、当然ながらここにも狙いが。狙いというより、王者パテックが作り出す時計の宿命、と言ってもいいかもしれませんね。なにかというと、複雑機構の搭載です。
クロノグラフを搭載するなど、アクティブなシーンで使える機能を増やすことで、より本格的にスポーツウォッチとしてのポジションを取っていこうじゃないかと。2007年のリニューアルは、そのための準備でした。
結果、現在までに、クロノグラフとトラベルタイムが追加ラインナップされ、アクアノートはブランドを代表するモデルの一つにまで成長しています。
しかし、それでもなお、パテック・フィリップ社長のティエリー・スターン氏は『アクアノートの開発はまだ途中である』と語っています。
スターン氏が狙うアクアノートの将来像とは一体どんなものなのか。それは、パーペチュアルカレンダーなど、超複雑機構の搭載だと言います。
そこまでやり遂げてこそ、パテック・フィリップファミリーのひとつ。マスターピースと呼ぶにふさわしいシリーズになると。
アクアノートは、2007年のリニューアルによって、構造上ノーチラスよりも化ける存在になったそうです。ノーチラスが成しえていないトゥールビヨンの搭載も、アクアノートであれば可能なのだとか。
これが実現したら、もう弟分とは呼べない存在になりますね!
といったところで、本日はパテック・フィリップ アクアノートについて、お送りいたしました。
誕生から23年。これからの展開も楽しみなモデルですね!