2021.06.04

ボールウォッチの歴史|アメリカ鉄道史から生まれたタフウォッチ

ボールウォッチ歴史

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「ボールウォッチの歴史|アメリカ生まれのスイスウォッチ 鉄道史と共に歩んだタフな腕時計」の書き起こしです。

ボールウォッチの歴史について、お送りして参ります。ブランドの創業は1891年。アメリカ合衆国 オハイオ州で誕生し、現在はスイス ラ・ショー・ド・フォンを拠点に時計作りと行っています。

「産業に貢献できる機能性」というメッセージを掲げ、過酷な条件下においても安心して使える時計、非常に高い『耐久性』を誇る時計を作っています。

↓動画でもご覧いただけます。

『デザイン』も一目でボールウォッチのそれとわかる。アイコニックなものになっています。

このブランドアイデンティティ。一体どこから生まれたものなのか。その背景には、アメリカの鉄道発展の歴史がありました。

ブランド誕生、そして進化のストーリーから、ボールウォッチの魅力、たっぷりお伝えしていきたいと思います。

目次

ボールウォッチの特徴

さて、ではまずはブランドの強み、ボールウォッチが作り出す時計の特徴から見ていきたいと思います。ブランド公式サイトを開いてみると、テクノロジーという項目で、実に18個もの技術が記載されています。

ボールウォッチ夜光

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例えば夜光。暗闇でも高い視認性を確保するため、マイクロガスライトという自発光材料が使われています。通常実用時計に使用されるのは、ルミノバなどの蓄光材料。日中に光を貯め込んで、それを夜間に光らせるという材料です。

しかし、ボールウォッチのマイクロガスライトは、自発光材料なので、日中に光を貯めずとも光る。言い換えると、常に光っている状態。しかも電池などの電力を必要とせずに、自ら光っているというものです。

904lスチール

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また、ロレックスと同じ金属、腐食や傷に強い鉄系素材904Lステンレスを使用していたり。ムーブメントとケースの間にクッションを入れたり、リューズガードにロックが付いていたり。さらに、耐磁性、耐衝撃性、耐低温性などもあり。

過酷な使用条件下でも正確な時を刻むよう、非常にタフな作りに拘っていることがわかります。

では、この拘り。一体どこから来ているのでしょうか。その答えは、ブランドの創業背景にあります。

ブランドの創業背景

ボールウォッチの創業は、1891年のアメリカ オハイオ州。創業者ウェブスター・クレイ・ボールは、1879年宝石商としてキャリアをスタートします。が、彼の運命は最初から時計作りへと導かれていたのかもしれません。

ウェブスター・クレイ・ボール

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なぜかというと、この時代のアメリカ、時計史における大きな出来事が1つ。1884年の国際子午線会議。そして、鉄道史における大きな出来事も1つ。1891年の速達郵便列車の衝突、炎上事故。

創業者ウェブスターは、この2つの出来事により時計メーカーへの道を歩むこととなります。

国際子午線会議とは

一つずつ見ていきましょう。まずは時計史における大きな出来事、国際子午線会議から。こちらはご存知の方も多いかと思います。GMTの制定ですね!

1884年ワシントンD.C.で開催された国際子午線会議。イギリスのグリニッジ天文台の時間を、国際的な基準時刻にしようと決めた会議です。

なぜ国際的な基準時刻が必要になったのかについてですが、この時代、人々の移動手段および軍需品の輸送手段として、アメリカ各地で鉄道が使われるようになっていたんですね。

その過程で、陸上でも時差という概念が必要になったんです。大陸が横に長いアメリカでは、特に必要な規定だったことと思います。

アメリカのタイムゾーン

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詳しくは、基礎知識動画GMT編でまとめておりますので、ぜひそちらもご覧になって頂ければと思います。

こうして1884年以降、世界基準時刻を取り入れるようになったアメリカ。ワシントン海軍天文台からは、時報が発せられるようになりました。

創業者ウェブスターは、こんな時代に生きていたんですね。自らの宝石店に置いてある時計の時刻を、海軍の時報に合わせるということを楽しんでいるうち、時計というものに強い関心を持つようになっていきました。

そして、その噂はやがて鉄道関係者の耳に入ることに。1888年には、宝石商でありながら、クリーブランドおよびピッツバーグ地区の鉄道で、主任時計検査官に任命されることとなります。

オハイオ州キプトンの鉄道事故

そして、ここにもう一つの大きな出来事が起こります。1891年のオハイオ州キプトン。速達郵便列車と旅客列車が、線路上での待ち合わせ・すれ違いに失敗。猛スピードで衝突し、炎上するという大事故が発生。両車両の機関士と、6名の乗務員が死亡する大惨事となりました。

キプトンの鉄道事故

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アメリカの鉄道史は、1830年代よりスタート。1850年代には運航数が大幅に増加し、便利になる一方で事故が多発していました。そこで鉄道各社は、当時既にイギリスが使用していた信号とブレーキを連動させるシステムなどを順次導入していました。

そこに来て、この大きな事故。原因は何だったのかというと、機関士の時計でした。片方の機関士の時計は4分遅れ。もう片方の機関士は、時計の時刻を軽視していたのか、時計を見た形跡すらなかったと。

この事故を重く受け止めた鉄道当局は、ウェブスターにより広範囲での検査担当を依頼。この流れから、創業者ウェブスターのキャリアは、宝石商から時計業者へと、本格的に舵を切ることとなります。

時計検査官から時計メーカーへ

さて、監督検査官に任命されたウェブスター。まず行ったのは、広範囲の鉄道に時計検査官を置くということ。

車掌、機関士、駅係員等の鉄道事業で使用されている全ての時計を優秀な時計職人の手によって検査。標準時との誤差30秒以上の時計に関しては、調整を義務付けるというルールを設けました。調整後の時計は、使用者が誤ってリューズを回さないよう、ロウ付けまで徹底したそうです。

ボールウォッチ広告

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このウェブスターの検査システムは、全米の75%のエリアで導入。史上初めて成功を収めた全域施策として、アメリカ鉄道史にその名を刻むこととなります。

そして次の一手として、ウェブスターが進めたのは、時計メーカーの設立。1894年より、時計作りが行える組織作りを開始。1896年には、ムーブメントおよびデザイン面で複数の特許を取得し、1897年ボール鉄道標準時計株式会社を設立します。

鉄道事故からここまで、わずか6年というから驚きです。物凄いスピードで、自ら鉄道員の時計を作り出すというところまで進めてしまったんですね。

ボールウォッチ歴史

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宝石商だった青年は、こうして時計ブランド・ボールウォッチの創業者になったというわけです。以降、1950年代には、高速道路の建設がスタートしたや、空路が整備されたことで、鉄道の需要は徐々に減少。鉄道時計の需要も減っていきました。

また、1970年代には、皆さんご存知のクォーツショック。機械式時計自体、需要が減っていきました。アメリカ鉄道史に大きく貢献したボールウォッチもやはり時代の波に飲まれてしまうのか。

と思いきや、現在はなんとスイスに拠点を移し、時計作りを続けています。なぜ、こんな勝負ができているのでしょうか。

それは、鉄道時計として作りこまれてきたタフさ、そしてそれを実現するために取り入れられている
独自のデザインおよび機能にあるのではないでしょうか。

鉄道時計として培った強み

冒頭でお話した、ボールウォッチの特徴。歴史を知った上でここに戻ってくるわけですが、自ら光る文字盤の文字は、長時間の夜間走行でも、はっきり時間が見えるようにとしたもの。

大きく見やすい数字や針は、昼夜問わず一瞬で時間を読めるようにとしたもの。耐久性は、蒸気機関車で石炭をくべるというハードな動きにも対応できるようにとしたもの。

ボールウォッチとは

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耐低温性は、寒い地域での走行時も、精度を保ち安全性を確保するためのもの。防水性は、豪雨に耐えるためのもの。耐磁性は、機械から発せられる磁気に耐えるためのもの。

リューズロックは、かつて検査後の時計に施されたロウ付けに敬意を表したもの。

ボールウォッチの時計は、デザインや機能、すべてに意味がある。すべてのデザインや機能から、アメリカ鉄道史を感じることが出来るんです。

しっかり意味のある時計であること。そしてそれが現代の労働環境においても、申し分なく使えるというところに、強い魅力があるのではないでしょうか。

ハイスペックなタフウォッチをリーズナブルな価格で

といったところで、ボールウォッチの歴史と魅力について、見てきました。ハイスペックな機能を持つタフな時計は、登山やダイビング、スキー、カヤック、乗馬など、アウトドアアクティビティとの相性も良いですよね。

また、ボールウォッチの魅力は、高すぎない価格というところにもあります。

「決して高額にはしない。私たちの願いは、安心して長く使える時計を作ることなのです。」

研究開発の担当部長のこの言葉からも、価格設定に重きを置いていることがわかります。

耐衝撃性、耐磁性、防水性能などがあり、スイスクロノメーター認証の精度もある。それでいて、ほとんどのモデルが30万円以下。高いものでも40万円前後。

時代が変化しても、使用者に寄り添った時計作りを続けている点、非常に好感が持てますね!