普段、ロレックスの買取相場について調査を行なっている当サイトですが、執筆者本人たちも当然ロレックスファンなのでロレックスを所有しています。今回はスピンオフ企画ということで、手持ちのエクスプローラー1の調子が悪かったため、オーバーホールに出してみました。
目次
- エクスプローラー1の調子が悪い|OH前の基本チェック
- オーバーホール1、分解
- オーバーホール2、洗浄
- オーバーホール3、組み上げ
- オーバーホール4、精度チェック
- 仕上がり!!
- まとめ
エクスプローラー1の調子が悪い|OH前の基本チェック
今回は自己所有のエクスプローラー1をオーバーホールに出してみたわけですが、そもそもオーバーホールってなに?というところからご説明します。
時計のオーバーホールとは
機械式時計の定期メンテナンス・分解清掃のこと。
機械式時計は部品と部品の摩耗が生じる箇所があり、その部分に使用される油が劣化するため、約3~4年に一回のオーバーホールが必要となる。
オーバーホールをせずに使用し続けた場合、パーツが摩耗し、時計の寿命が短くなる。
エクスプローラー1…不調です
さて、手持ちのエクスプローラー1Ref.214270ですが、購入して約3年です。そろそろオーバーホールの時期かなぁと思っていた矢先ですが、日常使用において以下の不調を感じていました。
- 1日2〜3分ズレる
- 手巻き時のリューズの動きが重い
というわけで、いつも『今週の3本』でお世話になっている浜松町のハッピープライスさんに行った際、テスターをお借りして具合を確認することに。
テスターで異常な数値が出ていれば、調子が悪い部分がある程度特定できます。特にテンプの『振り角』は、主ゼンマイの力が正しく伝えられているかを示す数値であり、異常な場合は油切れなど動きを妨げるなんらかの不具合があることを意味します。
↑ こちらがその数字。振り角は157度でした。
↓ ちなみに新品のデイトジャストを測ってみると…全然数値が違うことがわかります。
正常値は270〜300。新品デイトジャストはわずかにしかゼンマイを回していないにも関わらず、振り角295度と、精度よく動いていることがわかります。
対して、不調のエクスプローラー1は数値が小さく、テンプの動きに元気がないことがわかりましたので、そのままオーバーホールをお願いしました。
オーバーホール1、分解
では、実際にオーバーホールの様子を写真にてレポートしていきます。撮影ご協力は、ハッピープライスさんの修理部にて。
まずは分解。専用工具で裏蓋を開けていきます。
続いてリューズを引き抜き、ケースからムーブメントを取り出します。一度抜いたリューズは、ケースから取り出したムーブメントに再び差し込んでおきます。
文字盤から針を外し、さらにムーブメントから文字盤を外します。
そしてさらに分解。細かい部分は顕微鏡を覗きながらの作業です。
ちょっと興奮してしまったのは、ツインブリッジに支えられたテンプが見れたこと。自分の時計とは言え、ブルーパラクロムヒゲゼンマイとパラフレックスショックアブソーバーを目視できる機会なんてそうそうないですよね。
↑ こちらは自動巻ローターと関連部品。
↑ そしてこれが主ゼンマイです。香箱と呼ばれるケースに収められています。
オーバーホール2、洗浄
続いて、分解した部品を洗浄していきます。
油分を洗浄するため、有機溶剤を使用します。
ブラシで丁寧に洗った部品は、溶剤を飛ばして乾燥させます。
↑ 分解洗浄した部品。3針構造のエクスプローラー1でも50以上の部品で構成されているとのこと。
ちなみに、ケースとブレスレットは超音波洗浄機にて汚れを落とし、傷等を磨き上げていきます。
オーバーホール3、組み上げ
洗浄が完了し、溶剤が乾き切ったら、今度は組み上げていきます。このとき、劣化や摩耗した部品は交換していきます。
今回は自動巻ローターの芯と、ゴムパッキンを交換していただきました。(メーカー純正かどうかを選べますが、今回は純正を選択。)
↑ 写真中央にあるボタンのような部品がローター芯。大きさ比較のため1円玉を並べてみました。
↓ ゴムパッキンは、裏蓋用とリューズ用の2種類を交換しました。
オーバーホール4、精度チェック
時計の組み上げが完了したら、精度チェックをして完了です。
精度チェックは、平置き時の他に動的姿勢でも確認します。上の装置はいろいろな角度に回転し、動的姿勢での精度をチェックするための装置です。
仕上がり!!
そして後日。精度チェックをクリアして戻って参りました我が愛機はこちら。
かかった費用:
¥34,560
(交換部品代込み)
かかった日数:
約4週間
(スイスからの部品取り寄せ3週間 → 分解清掃から組み上げまでは1日 → 精度チェック約1週間)
オーバーホール後は、当たり前ですが精度よく絶好調です。
注意)費用と日数はモデルによって異なります。
まとめ
今回のエクスプローラー1の例では、日差が大きいこととリューズが重いことが不具合としてありましたが、他のモデルではその他の部分に不具合が出るケースもあります。
例えばサブマリーナやシードゥエラーの場合は回転ベゼルの動きが重くなってしまったり、デイトジャストの場合は日付の動きが悪かったりなど。
モデルによって不調になる箇所が異なりますので、日常使用において何らかの不調を感じる敏感さも持っていたいところです。
また、今回は不調を感じてオーバーホールを行なった流れでしたが、不調を感じなくとも3年〜4年に一度はオーバーホールを行うことをおすすめします。
機械式時計は無数の部品が噛み合って動いているため、前述の通り『油の劣化』が起きた際、部品が摩耗してしまい、時計の寿命が短くなってしまうためです。
ロレックスは大切に使えば何十年も愛用することができますので、ぜひ定期的なオーバーホールを心がけてくださいね!