ロレックスを代表するスポーツモデルの一角【コスモグラフ デイトナ】。その歴史と特徴をまとめました。1963年のファーストモデルから、自動巻へと進化した第4世代、そして現行モデルとなる第6世代まで。それぞれが持つ価値や進化の過程を見ていきましょう。
目次
- ロレックス デイトナ とは
- デイトナシリーズのルーツ Ref.6238
- デイトナ ファーストモデル Ref.6241、6239
- 超短命|第二世代デイトナ Ref.6264、6262
- 伝説的なレアモデル|第三世代デイトナ Ref.6263、6265
- 自動巻ムーブメントに進化|第四世代デイトナ Ref.16520系
- 完全自社製ムーブメントの採用|第五世代デイトナ Ref.116520系
- セラミックベゼル|第六世代デイトナ Ref.116500LN系
- まとめ
ロレックス デイトナ とは
ロレックスデイトナシリーズは、1963年頃に登場。1950年代末にサーキットコースである【デイトナ インターナショナル スピードウェイ】への協力がスタートしたことをきっかけに開発がスタートしました。
正式名称である【オイスターパーペチュアル・コスモグラフ・デイトナ】というモデル名は、人類の宇宙への挑戦、そしてスピードへの挑戦にインスパイアされて誕生したことから名付けられています。
現在は第六世代となるRef.116500LNが発売され、ロレックスを代表するスポーツモデルとして、世界中の腕時計市場で絶大な人気を誇っています。
デイトナの機能1、クロノグラフ
複雑機構をウリにしていないロレックスというブランドですが、デイトナには【クロノグラフ】という複雑機構が搭載されています。これはモータースポーツには欠かせない機構で、簡単に言うと『ストップウォッチ』です。
え?ストップウォッチが複雑機構?
そう思われる方もいるかと思いますが、Gショックのようなデジタルウォッチでは簡単な機能でも、機械式時計にとってはそうそう簡単にできるものではなく、細かい無数の部品が正確なタイミングで絡み合うことでのみ実現されます。
デイトナのクロノグラフムーブメントは、初期は手巻きでしたが、第四世代のRef.16520より自動巻に変更されました。
デイトナの機能2、タキメーター
【タキメーター】もモータースポーツに欠かせない機構です。機構といってもベゼルに記載された目盛りのことを指します。
タキメーターの目盛りは、上記のクロノグラフと合わせて読み取ります。クロノグラフをスタートさせ、そこから1km走行したタイミングで、クロノグラフの針が指しているタキメーター目盛りが平均時速になります。
このタキメーターの目盛りも、歴代モデルで変更が繰り返され、レーシングカーの進化と歴史を彩るものとしても興味深いものになっています。
デイトナシリーズのルーツ Ref.6238
デイトナシリーズの始まりは、1950年代後半まで遡ります。ルーツとなったモデルはクロノグラフRef.6238(cal.72B)。1950年代後半〜1960年代前半まで製造されました。
文字盤には『CHRONOGRAPH』の文字が記され、現在のデイトナをもイメージさせます。
デイトナとの違いは、タキメーターがベゼルではなく文字盤内に収められている点。その他の機能は、3つのインダイヤルにて表示される12時間積算計など、基本的には同じです。
デイトナ ファーストモデル Ref.6241、6239
デイトナファーストモデルは1963年〜1970年頃まで製造されたRef.6242とRef.6239です。ムーブメントはバルジュー社製のカスタム品cal.72B(cal.72から緩急針を無くし、新たにマイクロステラスクリューを採用するなど)の他、一部改良したcal.722、さらにマイナーチェンジを施したcal.722-1が採用されました。
デイトナ Ref.6241,6239 基本スペック
- 製造年:1965年〜1970年頃
- ケース&ブレス素材:ステンレススチール
- ベゼル素材:6241強化プラスチック、6239ステンレス
- ベゼルタイプ:200タキメーター
- 風防素材:強化プラスチック
- ケースサイズ:37mm径×12mm厚
- 防水性能:30m
- ムーブメント:cal.72B、722、722-1
- パワーリザーブ:50時間
Ref.6241と6239の違いは、ベゼルの素材のみになります。
デイトナ 1stモデル の価格相場
デイトナ Ref.6241
販売価格 ¥6,600,000 〜 時価
買取価格 ¥3,500,000 〜 時価
デイトナ Ref.6239
販売価格 ¥5,500,000 〜 時価
買取価格 ¥3,000,000 〜 時価
実例:アンティコルムオークション
Ref.6239 1965年式 トロピカルダイヤル 価格70,000ドル〜100,000ドル
テストモデル? デイトナ Ref.6240
ファーストモデルとセカンドモデルをまたぐ1965年〜1970年代後半。デイトナには影のモデルとも言われているもう一つのリファレンス6240が存在しました。
Ref.6240はクロノグラフのプッシュボタンがスクリュー付きになり、オイスターケース化したことで防水性能が50mまでアップされました。文字盤にもしっかりと『OYSTER』の表記がされています。
第二世代のプッシュボタンがスクリュー式でないことや、セカンドモデルではなくファーストモデルと同じムーブメントを使用していることなどを考えると、第三世代開発が同時期に進められれていたのではないかとも噂され、今もなお謎多きモデルとして語り継がれています。
超短命|第二世代デイトナ Ref.6264、6262
デイトナ第二世代は、製造期間約4年と非常に短命でした。こちらもプラスチックベゼルとステンレスベゼルの2モデルが同時にラインナップされ、ディテールこそファーストモデルと変更ないものの、ムーブメントが一新され cal.727 に変更されました。
デイトナ Ref.6264 ,6262 基本スペック
- 製造年:1965年〜1970年頃
- ケース&ブレス素材:ステンレススチール
- ベゼル素材:6264強化プラスチック、6262ステンレス
- ベゼルタイプ:200タキメーター
- 風防素材:強化プラスチック
- ケースサイズ:37mm径×12mm厚
- 防水性能:30m
- ムーブメント:cal.727
- パワーリザーブ:50時間
cal.727は前作のcal.72Bをベースに、耐震機構を強化(キフ・ウルトラフレックス)。さらに振動数を2万1600にまで増やしたことで、より精度の高いムーブメントに仕上がっています。
cal.727はこの後3rdモデルにも採用され、手巻きクロノグラフの名機として現在もコレクターに愛されている逸品になっています。
デイトナ 2ndモデル の価格相場
デイトナ Ref.6264
販売価格 ¥6,000,000 〜 時価
買取価格 ¥4,000,000 〜 時価
デイトナ Ref.6262
販売価格 ¥5,200,000 〜 時価
買取価格 ¥3,500,000 〜 時価
伝説的なレアモデル|第三世代デイトナ Ref.6263、6265
第三世代デイトナは手巻きムーブメントの最終モデルであり、完成形でもあります。セカンドモデルまでに改良されたcal.727を搭載し、Ref.6240で採用されたスクリューダウンプッシャーを引き継いだことで、精度良く防水性にも優れたクロノグラフが完成しました。
製造期間が約18年と非常に長く、現行のデイトナ系譜まで見ても、最もロングセラーとなっています。(第四世代は約12年、第五世代は約16年)
デイトナ Ref.6263 ,6265 基本スペック
- 製造年:1970年〜1988年
- ケース&ブレス素材:ステンレススチール
- ベゼル素材:6263強化プラスチック、6265ステンレス
- ベゼルタイプ:200タキメーター
- 風防素材:強化プラスチック
- ケースサイズ:37mm径×12mm厚
- 防水性能:50m
- ムーブメント:cal.727
- パワーリザーブ:50時間
このモデルより、デイトナはオイスターケースの名を冠することとなります。
また、製造期間が長いことでマイナーチェンジも多く繰り返されているため、年式や仕様の違いによって価格設定が変化することも大きな特徴です。
価格に関わる第三世代デイトナの主な仕様変更
ダイヤル:
初期は印字なし。
その後中央インダイヤル上に『DAYTONA』(通称ビッグデイトナ)。
メーカーメンテナンスなどで交換された場合、フォント幅が小ぶりな『DAYTONA』。
ブレスレット:
初期はフラッシュフィット一体型の巻き込み式オイスターブレス。
後半はフラッシュフィット分離型のハードタイプオイスターブレス。
ベゼルの書体:
オリジナルのプラスチックベゼルは、2とSの書体が角ばっている。
メーカーメンテナンスなどで交換された場合、滑らかな書体に変更。
プッシャー形状:
初期、中期、後期と3パターン。
初期オリジナルは溝のない寸胴タイプ。
後期またはメーカー交換パーツは、円周上に一周ぐるりと窪みのある『溝あり』形状。
デイトナ 3rdモデル の価格相場
デイトナ Ref.6263
販売価格 ¥7,000,000 〜 時価
買取価格 ¥5,000,000 〜 時価
デイトナ Ref.6262
販売価格 ¥5,300,000 〜 時価
買取価格 ¥3,300,000 〜 時価
激レア ポールニューマンダイヤル
Ref.6263には、レアダイヤルとして『ポールニューマンダイヤル(エキゾチックダイヤルとも呼ぶ)』が存在します。これは、レーサーとしても活躍したハリウッド俳優 ポール・ニューマン氏 が愛用したことからそう呼ばれるようになりました。
ビッグデイトナ以前の無印字ホワイト/ブラック文字盤で、インダイヤルのアラビアインデックスが大きく、一段窪んだ状態になっていることが特徴です。また、ダイヤルのミニッツサークル部分も一段窪んでおり、立体的な美しさも魅力です。
ポールニューマンデイトナは、ブレスレットも生産初期のフラッシュフィット一体型巻き込みブレス『No.7835 FF No.71N』が装備されており、完全なるオリジナル状態で残っている場合は、億越えの価値を有する激レアロレックスです。
自動巻ムーブメントに進化|第四世代デイトナ Ref.16520系
デイトナが自動巻になったのは第四世代となるRef.16520系から。ムーブメントにはゼニス社製の『エル プリメロ』のカスタム品が使用され、ベゼルは金属製に統一、さらにサファイアクリスタル風防が採用されたことで、防水性能も100mまで向上しました。
オールステンレスでは2色の文字盤が展開され、18Kゴールド素材のRef.16528や、コンビ素材のRef.16523などのラインナップもこの時代から別リファレンスにて追加展開されました(第三世代までは素材が違くても同リファレンスでした)。
デイトナ Ref.16520 基本スペック
- 製造年:1988年〜2000年
- ケース&ブレス素材:ステンレススチール
- ベゼル素材:ステンレススチール
- ベゼルタイプ:400タキメーター
- 風防素材:サファイアクリスタル
- ケースサイズ:40mm径×12mm厚
- 防水性能:100m
- ムーブメント:cal.4030
- パワーリザーブ:54時間
生産期間はサードモデルより短く約12年ですが、その間にマイナーチェンジが繰り返されているため、やはり年式や仕様によって価値が変化するという特徴があります。
特に文字盤の仕様が異なる初期生産品番、インダイヤルのカラーが特殊(パトリッツィダイヤル)なS品番とW品番、最終年式にあたるP品番およびその前年A品番が激レア化しており、P品番は手巻きデイトナに迫る価格にまで上昇しています。
デイトナ 4thモデル の価格相場
デイトナ Ref.16520 ステンレス
販売価格 ¥1,950,000 〜 ¥4,800,000
買取価格 ¥1,350,000 〜 ¥4,000,000
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デイトナ Ref.16523 コンビ
販売価格 ¥1,090,000 〜 ¥1,820,000
買取価格 ¥810,000 〜 ¥1,260,000
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デイトナ Ref.16528 イエローゴールド
販売価格 ¥1,600,000 〜 ¥2,200,000
買取価格 ¥1,600,000 〜 ¥2,200,000
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完全自社製ムーブメントの採用|第五世代デイトナ Ref.116520系
デイトナにロレックス自社製ムーブメントが用いられるようになったのが6桁リファレンスの第五世代です。基本的なデザインは第四世代を受け継ぎ、ムーブメントを完成させるというモデルチェンジになりました。
ムーブメント変更に伴いハック機能が追加され、パワーリザーブは54時間から72時間にアップ。さらに3つのインダイヤルの配置が変わるなどの変更が施されています。
第四世代同様にイエローゴールドやホワイトゴールドおよびコンビモデルの展開がある他、新たにエバーローズゴールドとプラチナのラインナップが追加されています。
デイトナ Ref.116520 基本スペック
- 製造年:2000年〜2016年
- ケース&ブレス素材:ステンレススチール
- ベゼル素材:ステンレススチール
- ベゼルタイプ:400タキメーター
- 風防素材:サファイアクリスタル
- ケースサイズ:40mm径×12.5mm厚
- 防水性能:100m
- ムーブメント:cal.4130
- パワーリザーブ:72時間
2016年の生産終了後、価格は現在も上昇しており、特に最終年式は入手が困難になっています。
デイトナ 5thモデル の価格相場
デイトナ Ref.116520 ステンレス
販売価格 ¥1,430,000 〜 ¥2,300,000
買取価格 ¥1,300,000 〜 ¥1,580,000
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デイトナ Ref.116523 コンビ
販売価格 ¥1,170,000 〜 ¥1,750,000
買取価格 ¥1,000,000 〜 ¥1,160,000
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デイトナ Ref.116528 イエローゴールド
販売価格 ¥2,580,000 〜 ¥3,100,000
買取価格 ¥1,450,000 〜 ¥1,960,000
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セラミックベゼル|第六世代デイトナ Ref.116500LN系
第五世代のムーブメントを引き継ぎ、文字盤ディテールの変更およびベゼルディスクの素材をセラミックに変更して登場したのが第六世代の現行モデルデイトナです。
これまでプラスチックと金属の素材で展開されていたベゼルがセラミックになったことで、衝撃や擦れによる傷がつきにくくなりました。
さらにベゼル印字部分には特殊なプラチナコーティングが施されており、経年劣化による墨落ちの心配がなくなりました。
デイトナ Ref.116500 基本スペック
- 製造年:2016年〜現行
- ケース&ブレス素材:ステンレススチール
- ベゼル素材:特殊コーティングセラミック
- ベゼルタイプ:400タキメーター
- 風防素材:サファイアクリスタル
- ケースサイズ:40mm径×12.5mm厚
- 防水性能:100m
- ムーブメント:cal.4130
- パワーリザーブ:72時間
定価は約127万円ですが、発売以降ずっと高騰中で、現在もユーズドで200万円、新品なら250万円以上の販売価格になっています。
ブラック文字盤が人気だった前作前々作と比較して、このモデルはホワイト文字盤の方が人気が高く、価格もやや高めに設定されています。
また、やはり18Kゴールドモデルとコンビモデルも同時期にリニューアルされていますが、なぜかそちらは金属製のベゼルのままの仕様になっています。
デイトナ 6thモデル の価格相場
デイトナ Ref.116500 ステンレス
販売価格 ¥2,000,000 〜 ¥2,750,000
買取価格 ¥1,650,000 〜 ¥1,960,000
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デイトナ Ref.116503 コンビ
販売価格 ¥1,530,000 〜 ¥1,910,000
買取価格 ¥1,200,000 〜 ¥1,320,000
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デイトナ Ref.116508 イエローゴールド
販売価格 ¥3,000,000 〜 ¥3,250,000
買取価格 ¥2,300,000 〜 ¥2,700,000
第六世代のステンレスモデルはこれまでのオールステンレスと見た目の印象がかなり変わっているため、どっちが好みかというファン論争は今後も大いに行われることになりそうですね。
まとめ
以上、ロレックス デイトナ シリーズ についてまとめてみましたが、いかがでしたか。
購入時の最低予算150万円以上と、ステンレス製のスポーツロレックスの中ではかなり高額のモデルとなりますが、やはり一度は手に入れたい夢のモデルです。
同じ世代のデイトナでも、細かい仕様によって価格も変化する面白いモデルですので、購入検討の際は、ネットで見るだけにとどめず、ぜひ色々なお店を回って、実物を確認しながら選ぶことをおすすめします。