
今回はフィフティーシックスの開封動画をきっかけに、この感動といいますか、ヴァシュロン・コンスタンタンのデザインの魅力、お伝えしたいなということで、現行のコレクションと、その源流となったモデル、まとめてみました。
ヴァシュロン・コンスタンタンの時計、すでにお持ちで詳しい方も、まだそんなに知らないよという方も、ぜひ一緒に楽しんでいただければと思います。
目次
- ヴァシュロンコンスタンタンとは?
- ヴァシュロンコンスタンタンのデザインの魅力
- ブルーエナメル|シャンルヴェ・エナメル技法
- パトリモニーエクストラフラット
- クロワゾネ技法
- メティエダール
- アルカディアの牧人たち
- エナメル職人カルロ
- 金細工のリストウォッチ
- マハラジャに贈られた腕時計
- トノー、マルタ
- アメリカン、ヒストリークアメリカン1921
- トレド
- ホーンラグ、コルヌ
- 6073、フィフティーシックス
- ラウンド、パトリモニー
- 222、オーヴァーシーズ
- まとめ
記事内画像の引用は全てブランド公式サイトより。
https://www.vacheron-constantin.com
ヴァシュロンコンスタンタンとは?
では、早速1本目はこちら。エクスプローラー2 Ref.16570です。さて、まずはヴァシュロン・コンスタンタンがどんなブランドなのか、簡単にご紹介していきます。
ブランドの創業は1755年。260年以上の長い歴史を持つ、世界最古と言われる時計ブランドのひとつであり、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲとともに、世界3大時計ブランドの一角としても数えられる老舗ブランドです。
2000年代よりリシュモングループの傘下に属していますが、独立メゾン時代からの卓越した時計作りは、しっかりと継承され、現在も魅力的なコレクションを、多数ラインナップしています。
創業者は、1755年当時24歳だった時計師ジャン=マルク・ヴァシュロン。ブランドとして最初に製作した、1755年製の銀製ポケットウォッチは、針やインデックス、ムーブメントへ華やかな細工が施されました。そしてそれを収めるケースは、あえてシンプルに仕上げているというセンスの良さ。
ムーブメント作りの技術はもちろんですが、創業当時より、デザインにも並々ならぬこだわりを持っていたことがわかります。
1810年には孫の代へと引き継がれ、1819年には優秀なビジネスマン、フランソワ・コンスタンタンとの出会いをきっかけに、世界展開がスタート。
1834年には、技師ジョルジュ=オーギュスト・レショーがパンタグラフという金属工作装置を開発したことで、すべて手作業だった時計作りの一部を機械化することに成功。量産に耐えうる生産体制を整えたことで、世界展開が本格化されます。
そして1901年には、国際的な精度認証であるジュネーブシールを取得。以降、機能・デザイン・品質という3つの軸で高く評価され、3大ブランドと呼ばれるまでに成長していくこととなります。
ヴァシュロンコンスタンタンのデザインの魅力
ここから本題ですが、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計、やはりデザインが秀逸なんですよね。ちなみに、同じ3大ブランドにカテゴライズされるパテックフィリップが、本格的にデザインという概念を取り入れ始めたのは、1929年の世界恐慌後。同じくオーデマ・ピゲは、1900年のアールヌーヴォー様式ブローチ型ウォッチからと言われています。3ブランドとも、機能、品質、そしてデザインを得意とするブランドであることに違いはありません。
しかしながら、創業時よりこだわりを持っていたという点、デザインにおいては、ヴァシュロン・コンスタンタンが先を行っていたのではないでしょうか。ということで、ここから先は、ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史的なモデルと、その色を継承する現行モデル、交互にご紹介していきたいと思います。
ブルーエナメル|シャンルヴェ・エナメル技法
まずはこちら。1824年に発表された懐中時計。
イエローゴールド製のケースにイタリア地図を描いています。ご覧の通り、かなり細かく描かれています。この時用いられたのが、シャンルヴェ・エナメル技法というものですが、現行モデルにもしっかりと応用されています。
パトリモニーエクストラフラット
パトリモニー・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー。
この深いブルーの文字盤は、1824年に用いられた技法の現代版アレンジです。ゴールドのアワーマーカーと針との組み合わせで、見事に星空を作り上げていますよね。
クロワゾネ技法
次にお見せしたいのも、エナメルによる芸術的な懐中時計。こちらはクロワゾネと呼ばれるエナメル技法を用いて製作され、1906年のミラノ万博に出展。
その美しさは審査員を感動させ、見事グランプリに輝いたそうです。そしてこの技法、現代ではどのモデルに使われているかというと、こちら。
メティエダール
フランス語で『職人技の芸術』を意味するモデル名を持つコレクション、メティエ・ダールで引き継がれています。
時計職人の中でも、デザインに特化した職人たちが作り出す圧巻の芸術作品。ため息が出る美しさとはこのことですね。時間を読むという本来の使い方を忘れてしまいそうです。
アルカディアの牧人たち
19世紀前半から20世紀中盤までのヴァシュロン・コンスタンタンは、この他にも芸術的な懐中時計を数多く残しており、著名な芸術作家とも深い繋がりを持っていました。
1923年発表のこちらの作品は、ニコラ・ブッサンの『アルカディアの牧人たち』という絵画を、ジュネーブの彩密画家ルイーズ・ゴルがエナメルによって書き起こしたものです。
エナメル装飾というのは、釉薬を使って焼き上げる、いわば陶器の様な作り方をするのですが、描くときの釉薬の濃さや微量成分の違い、焼く時の酸素量や温度の違いなど、コントロールしにくい要素が多く、時計のデザインとしては最高ランクで難易度が高い技法です。
エナメル職人カルロ・パルッツィ
それをまるで絵画のように操ってしまう超絶技巧には、ただただ驚きしかありません。1952年に発表されたこちらの作品も素晴らしいですね。
平面に描かれた小さな絵なのに、広大な奥行きを感じます。ポール・ブリル作の『鹿狩りの情景』という作品を、イタリアのエナメル職人カルロ・パルッツィが書き起こして作られました。
金細工のリストウォッチ
エナメル技法と並んで、ヴァシュロン・コンスタンタンにはもう一つ優れているデザイン技術があります。それがエングレイビングです。
こちらの女性用腕時計は、1889年に作られたもので、腕時計としてもかなり早い段階での完成で、非常にセンセーショナルなものでしたが、今回注目したいのは、金属装飾の素晴らしさです。
時計部分が女神の翼で支えられる形状に象られています。上から見るとこんな感じ。女神の髪の毛まで、非常に丁寧に彫り込まれていることがわかります。
マハラジャに贈られた腕時計
1916年に一点ものとして製作されたこちらの腕時計も、精巧なエングレイビングが施されています。植物柄に彫り込まれた部分は透かしになっており、垂直面にはダイヤモンドがセッティングされています。
金属を自在に操り、デザインという形で表現していく技術は、20世紀初頭から本格的に販売されるようになる腕時計にも、広く応用されていくこととなります。
トノー、マルタ
1912年以降は、現代に復刻されることとなるモデル、多数登場する時代に突入します。1912年に登場したこちらのトノー型腕時計。
ブランドに詳しい方は、お気づきかと思いますが、現行モデルのマルタコレクションの原型となったモデルです。
ブランドサイトには、『アヴァンギャルドな精神で、従来のラウンド型ケースに別れを告げることを決断』と書いてありますが、こうした冒険的な時計作りは、ムーブメントの技術だけでは成り立たず、デザインの経験と技量があってこそ可能になります。
アメリカン、ヒストリークアメリカン1921
1921年に発表されたアメリカ市場向けの腕時計も、やはりラウンド型ではなく、クッション型のケースを採用したものでした。
こちらも個性的なので、お分かりかと思いますが、現行復刻モデルはこちらですね。
ヒストリーク・アメリカン1921。2008年に発売されたモデルですが、クッション型のケースに斜めに傾いた文字盤が個性的ですよね。リューズの位置と形も、香水のビンの蓋みたいでなんとも可愛らしい。
1920年代初期は、アメリカの自動車メーカー・フォード製のモデルTが、販売台数100万台を超えた時代。斜めに傾けられた文字盤は、当時の活気あふれるアメリカで、自動車に乗る人々に向けた使用でした。
トレド
続いて、1952年に登場したこちらの湾曲スクエア型の時計は、第二次世界大戦からの復興時期のクリエイティブな世界の波から着想を得て誕生。
画像が無いのが残念ですが、1998年と2003年に2度リメイクされ、限られた期間でのみ販売されました。
ホーンラグ、コルヌ
そして1955年。タキメーター付きのクロノグラフが発表されます。
このモデル、ケースこそラウンドに回帰されましたが、ケースとブレスを繋ぐ部分、ラグと言いますが、牛の角のような形状になっています。やはりただのラウンドにしない点、デザインへのこだわりの強さを感じますね。
これの復刻モデルはこちら。ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ。フランス語でコルヌは角。ヴァッシュは牛です。この形状、ホーンラグとも言いますね。
6073、フィフティーシックス
ラグにデザインの個性が表現されたのは、翌年1956年に発表されたこちらのモデルも然りです。Ref.6073というモデルですが、これが2018年に登場したフィフティーシックスの原型となったモデルですね。
マルタ十字の手を象ったラグデザインは、現代風にアレンジ。リューズガードを兼ねる形に変更され、個性を残しながらも、より実用性も考えたデザインになっています。
アラビア数字を使った文字盤デザインも、スポーティな印象が加わって、硬派過ぎず軟派過ぎず、バランスよく仕上げられています。
ラウンド、パトリモニー
続いて、ラウンド型のエレガントウォッチ・パトリモニーの原型となったモデルが1957年発表のこちら。こだわり抜いてきた装飾をひたすらに排除し、シンプルを突き詰めた時計として誕生しました。
シンプルではないものを知っているからこそ、表現できるシンプル。ヴァシュロン・コンスタンタンのデザインへのこだわりは、ここにも感じることが出来るのではないでしょうか。
222、オーヴァーシーズ
そして最後にご紹介するのはこちら。1977年にメゾン222周年を記念して作られたCODENAME.222というモデルです。
限定数量も222本で販売されました。時代背景としては、セイコーがクォーツウォッチを発表した後、世界的に腕時計というものが普及した時代。
より丈夫で普段使いが可能な時計が求められた時代であり、オーデマ・ピゲがロイヤルオークを、パテックフィリップがノーチラスを発表したのと同じ時期になります。
222のケースとブレスが一体化されたデザインは、西洋の甲冑を思わせる見た目の通り、非常に堅牢なものに仕上げられ、旅・冒険・アウトドアライフを楽しむ時計として、登場しました。
この222というモデルは、1996年にオーヴァーシーズコレクションとして再解釈、リメイクが行われることに繋がっていきます。オーヴァーシーズは、2016年にフルモデルチェンジが行われて話題になりましたね。
ブランドサイトには、『余分なものを省いて必要不可欠なものだけを残したこの次世代のタイムピースは、快適性、人間工学、簡単な操作によって、あらゆるニーズに対応する他に類を見ない実用的なモデルとなっています。』と記されています。
新しいモデル、ブレスのデザインがマルタ十字になっていて、メチャクチャ格好いいですよね。
まとめ
というわけで、今回はヴァシュロン・コンスタンタンの時計、デザインという部分にフォーカスして、過去のモデルと現代のモデル、ざっと見てきました。やはりどれも魅力的ですよね!
創業時からのこだわりを強く感じられますし、ヴァシュロン・コンスタンタンにしか表現できない形状というか、シェイプというか、一目でそれと分かる個性があります。
2016年のオーヴァーシーズリニューアル、そして2018年のフィフティーシックスリリースと、モダンデザインへのチャレンジで今また注目されている同ブランド。今後発表される時計のデザインも、とても楽しみですね!