※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「世界5大時計ブランドとは|腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。
腕時計初心者の方向けに、毎回1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくシリーズ。今回は、『5大時計』について、お伝えしていきます。
時計業界における5大ブランドは、 パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲ、ブレゲ、A.ランゲ&ゾーネ。 この5つです。 以前、別記事にて先の3つ、3大ブランドについては、お届けいたしました。
今回の記事では、後の2つですね、ブレゲとA.ランゲ&ゾーネについて、それぞれどんなブランドなのか。 そして、なぜ5大と呼ばれているのかについて、ご紹介して参ります。
目次
- 3大時計のおさらい
- ブレゲの概要
- A.ランゲ&ゾーネの概要
- 5大ブランドはなぜ5大ブランドなのか
- 世界最高峰の技術
- 王侯貴族や富裕層向けに一点ものを提供
- 歴史は一度途絶えている
- 時計業界の発展と保護に貢献
- まとめ
3大時計のおさらい
では、まずは3大ブランドについて、簡単におさらいしていこうと思います。 時計業界における3大ブランド。 パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲ。 これらには、4つの共通点があり、それが3大と呼ばれる所以なのではないか、とお伝えしました。
その共通点というのは、
- 世界最高峰の技術を持っている
- 王侯貴族や富裕層向けに一点ものを提供してきた歴史がある
- 創業から歴史が途絶えていない
- 時計業界の発展と保護に貢献している
この4つでしたね。 詳細はぜひ、その回の基礎知識動画で確認してみてください。
で、今回ご紹介する5大時計の残りの2ブランド。 ブレゲとA.ランゲ&ゾーネも、この4つに当てはめながら、お話していきたいと思います。
ブレゲとは
と、その前に、ざっくりですが、ブランドの概要についてもおさらいしておきますね。 こちらも歴史動画(ブレゲの歴史)で取り上げていますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
まず、ブレゲですが、創業は1775年のフランス・パリ。 創業者は、時計の歴史を200年早めたと言われる天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲです。
この方、どのくらい天才かというと、いま現在の腕時計に搭載されている機構の多くは、元を辿るとこの人の発明に行きつく。 そのくらいの天才です。
ちなみに、現在はスウォッチグループに属していますが、 『現在もアブラアム=ルイ・ブレゲが手掛けた複雑時計の再現や、シリコン製の部品など新技術開発にも取り組んでいる。』 と書かれていることから、現代の技師たちの高い技術をもってしても、ルイ・ブレゲが手掛けた複雑機構の完全再現には至っていないということが分かる。 そのくらいの天才です。
A.ランゲ&ゾーネとは
続いて、A.ランゲ&ゾーネ。 創業は1845年のドイツ北部・ザクセン王国。 創業者フェルディナンド・アドルフ・ランゲは、宮廷時計師として活躍後、廃坑の村グラスヒュッテを時計産業の街として再興させた人物です。
時計師としての腕はもちろんのこと、彼の功績は、この街づくりにあります。 学校を開き、若い時計師を育てる。 そして自らが市長となり、グラスヒュッテをドイツ時計産業の中心地へと導いていきました。
実は、スイスやイギリスで時計産業が発達する以前、時計作りの中心地だったのはドイツなんですよね。 なので、当時グラスヒュッテが時計の街として栄えるということは、ドイツにとっても望んでいたことなのではないでしょうか。
5大ブランドはなぜ5大ブランドなのか
さてここから本題。 なぜこの2つが、5大ブランドなのかということについて。 以前3大の回でもお伝えした通り、明確にこうだから!という定義はありません。
それで、私なりにまとめたのが、先ほどもお見せしたこちらの4つの共通点でした。
- 世界最高峰の技術を持っている
- 王侯貴族や富裕層向けに一点ものを提供
- 歴史が途絶えていない
- 時計業界の発展と保護に貢献
ブレゲ、A.ランゲ&ゾーネをここに当てはめて、見ていきたいと思います。
世界最高峰の技術
まず1つ目の共通点は、世界最高峰の技術を持っているということ。 ここについては、3大時計に引けを取らない技術を有しているといっていいでしょう。 特にブレゲは、3大複雑機構のひとつ『トゥールビヨン』の生みの親でもあります。
また、均時差という途方もない数字を時計に組み込むことにも成功しています。 均時差というのは、1年を通し1日を24時間とした『平均太陽時』と、地球の公転が楕円であるため、太陽の南中から次の南中までを1日とするという『真太陽時』との時差のこと。 もう意味不明ですよね。
宇宙の動きをそのまま時計に納める。 これは3大ブランドの技術でも、製品化が難しいことかと思います。 また、ブレゲは文字盤のギョーシェ彫りや、ケースのコインエッジ、ブレゲ針など、独自の意匠を多く持っており、審美面でも非常に優れたブランドです。
片や、A.ランゲ&ゾーネの技術も、目を見張る物がありますね。 4分の3プレートと呼ばれる特殊形状のムーブメントを用いており、精度と耐久性を両立させています。 また、モデルごとにムーブメントを変えているという点も特筆すべきポイント。
通常、生産効率を気にして、同じムーブメントで複数のモデルを展開するというのが一般的。 しかし、A.ランゲ&ゾーネは、モデルごとに適切な機械を当てるべきだとし、ひとつひとつ変えています。 さらに、文字盤のデザインや、ムーブメントの彫り模様。 ここにも拘りを感じることができます。
個人的に見逃せないポイントは、スワンネックと呼ばれる調速機部分に施された彫り模様。 とにかく繊細で美しい!!
王侯貴族や富裕層向けに一点ものを提供
続いて2つ目。 王族や貴族向けに一点ものを提供していた歴史があるということ。 ここも2ブランドとも、非常にわかりやすいポイントかと思います。
ブレゲの創業者ルイ・ブレゲは、フランス王族御用達の時計師。 歴史上の顧客リストには、マリー・アントワネット、ロッシーニ、ナポレオン・ボナパルトなど、そうそうたる顔ぶれが並んでいます。
そして、A.ランゲ&ゾーネの創業者アドルフ・ランゲは、ドイツ・ザクセン王国の宮廷時計師。 グラスヒュッテの復興も、王室から与えられた課題でした。 ということで、どちらも元々は、庶民用の時計を作っていたブランドではなかったんですね。
ちなみに、6大7大8大となると、ジャガー・ルクルトやブランパン、ジラール・ぺルゴ等が入ってくるかと思います。 それらはいずれも歴史上多くの偉業があるブランドです。 しかし、王室との繋がりという意味では、やはりブレゲとA.ランゲ&ゾーネには及ばない。 故に、この2ブランドが5大なのではないでしょうか。
歴史は一度途絶えている
続いて、3つ目。 歴史が途絶えていないことですが、ここだけは3大と一線を引かれるポイントかと思います。 パテック、ヴァシュロン、オーデマの3ブランドは、創業から一度も途切れることなく、現代にまで継承されています。 しかし、ブレゲとランゲ。 こちらは、一時的にブランドが休眠または消失した歴史があるんです。
ブレゲがぶち当たったのは、後継者不在という壁。 ルイ・ブレゲの死後、息子や孫が引き継いではいましたが、どちらも時計に興味がないという。 スイスブランドではないため、マニュファクチュール化の波に乗り遅れたことも災いしました。
結果、1870年代から約100年間の休眠状態へ。 再び目を覚ましたのは、1970年代。 現代の名工ダニエル・ロートが、トゥールビヨンの小型化に成功したことがキッカケとなります。
そして1999年には、スウォッチグループ傘下へ。 スウォッチグループというのは、世界最大のウォッチメーカー集合組織です。 クォーツショック後のスイス時計業界を、復活させた立役者でもあります。
当時実用ブランドのラインナップがメインだったスウォッチグループは、次の一手として高級ラインを欲しがっており、またブレゲもスウォッチグループの潤沢な資金と技術を必要としての、合併となりました。
そしてA.ランゲ&ゾーネですが、こちらは不運にも、戦争によって消滅してしまったんですよね。 第一次世界大戦、そして世界恐慌。 ここまでは踏ん張ったものの、第二次世界大戦ではすべての工場が軍需工場へ。
時計作りがストップしてしまったことはもちろん、軍需工場になったことで、敵国の標的になってしまいます。 そして、終戦間際の1945年5月8日、ソビエトからの爆撃を受け、社屋は全壊。 この時、資料も設備も、すべて破壊されてしまい、ブランドとしての復活は絶望的と思われていました。
しかし、諦めない男というのは、いつの時代もいるもので、1990年代に4代目当主ウォルター・ランゲと、当時IWCを率いていたギュンター・ブリュームラインの手によって復活しています。
という感じで、3大ブランドとの違いは、この歴史が大きなところかと思います。 途絶えていないかどうかというところですね。
時計業界の発展と保護に貢献
そして、最後の部分。 時計業界の発展と保護に大きく貢献している、ということについて。 こちらも歴史的な功績と合わせて見ていくのが、分かりやすいかと思います。
ブレゲについては、先にもお話した通り、現代の技術は、ほとんどが遡るとブレゲの発明に行きつく。 自動巻き機構もそうですし、心臓部を衝撃から守る機構もそう。 ブレゲヒゲゼンマイやブレゲ針など、一般用語になってしまっているものもあるくらいです。
トゥールビヨンや均時差などの、超複雑機構もそうですね。 そういった歴史的な功績を踏襲し、現代の新作時計でも表現し続けている。 天才ルイ・ブレゲの存在を、後世にも語り継ぎ、次世代の時計師たちを刺激している。 そんな気概が感じられます。
また、A.ランゲ&ゾーネは、ドイツウォッチ最高峰ということで、自らもさらなる進化を求めつつ、アドルフ・ランゲが掲げた、グラスヒュッテを世界が認める時計産業の一大拠点に仕立て上げるんだ!というミッションを続けています。
まとめ
といったところで、本日は「5大ブランド」についての基礎知識、お届け致しました。 こうしてまとめてみると、エポックメイキングな事件が多い分、今回の2ブランドの方が、3大よりもわかりやすく特徴のあるブランドな気がしますね。
どちらも、本当に興味深く、魅力的なブランドだと思います。
↓動画でもご覧いただけます。