2020.03.10

【基礎知識 vol.12】クロノグラフとは|腕時計の基礎知識・基礎用語

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「ただのストップウォッチではない!クロノグラフの魅力とは|腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。

毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくコーナー。今回は、『クロノグラフ』について、お伝えしていきます。

クロノグラフというのは、ストップウォッチ機能を有した時計のこと。時計初心者の方でも、その名称くらいは、聞いたことがあるのではないでしょうか。今回の動画では、クロノグラフのデザインや機械構造、誕生ストーリーなどから、その魅力をお伝えしていこうと思います。

目次

クロノグラフとは?

さて、ではまずは、クロノグラフとはどんな機能なの?ということから、簡単にご紹介していきますね。冒頭でも触れた通り、クロノグラフというのは、ストップウォッチ機能を有する時計のことその名称は、時間を意味するChronoと、記録するという意味のGraphから由来します。

時計としての見た目はご覧の通り。

こちらはオメガのスピードマスター・プロフェッショナルという時計。文字盤内にインダイヤルと呼ばれる小さな文字盤が3つ配置されており、複数の針でストップウォッチの計時を記録するという作りになっています。

中の機械はどうなっているかというとこんな感じ。

フェイス面の複雑な表示は、この機械によって司られています。簡単に仕組みについて説明しますが、リューズの上下にあるボタンが、ストップウォッチのスイッチ類。スタートスイッチを押すとクラッチが作動。ゼンマイの動力がクロノグラフの針に伝わり、時間の計測が開始されます。ストップを押すとクラッチが離れて止まる。リセットボタンで、動いた針が元に戻るという仕組みです。

フェイス面の複数の針が動く様や、機械の歯車が動く様。なんか凄そう!他と違う感じがする!詳しいことはわからないけど、とりあえずカッコいい!クロノグラフの複雑な動きは、直感的に好き!と思わせる不思議な力がありますよね。

クロノグラフの誕生

次にクロノグラフがどう誕生して、どう進化してきたのか。その歴史について、お話していこうと思います。

クロノグラフの誕生は、18世紀初頭。1720年、大英帝国の時計師ジョージ・グラハムによって、基礎構造が考案されました。

その後、18世紀後半から19世紀にかけて、実用化がなされていきます。実用化の背景には、オリンピックの登場や自動車の量産化、航空機の発展などがあります。人々の暮らしが変化する中で、秒単位でのタイム計測を必要とするシーンが増えたんですね。

その後、クロノグラフが小型化され、懐中時計として市販化されたのは1878年。時計師アルフレッド・ルグリンが製作し、ロンジンというブランドが量産に成功。ロンジンは、その技術を活用し、1913年には腕時計タイプのクロノグラフの製造も成功させています。

クロノグラフの代表作4本

そしてそこから、腕時計としてのクロノグラフが大きく発展していくわけですが、1930年代~1970年代ですね。クロノグラフの発展期とも呼べるこの時代には、人類の新たなる挑戦とともに、多くの名作モデルが登場しています。

ここでは、有名モデルを4つほど。誕生背景とともにご紹介しておきますね。どれもクロノグラフの魅力を強く感じることができるものです。

ブライトリングが切り開いた航空クロノグラフというジャンル

まずは、こちらの2本。左は、ブライトリングのクロノマットという時計。右は、同じくブライトリングのナビタイマーという時計。

どちらも、ブライトリングの3代目当主ウィリー・ブライトリングが作ったパイロット用クロノグラフ。ブライトリングというブランドは、航空黎明期に誕生した時計ブランドです。創業時より航空機の発展を支えるため、専用のクロノグラフを作ることに特化してきました。

1936年には英国軍の公式サプライヤーとなり、航空機用の計器を製作。そこで培った技術を活かし、パイロットからの要望を強く反映した腕時計として誕生させたのがこの2本。1942年に誕生したクロノマット、そして1952年に誕生したナビタイマーです。航空機の発展とともに誕生した腕時計。大空へのロマンを感じる名作です。

華やかなカーレースの世界から誕生したロレックスデイトナ

続いて、こちらはロレックスのデイトナ。

ロレックスは、1930年頃からカーレースとの関りを持ち始め、1935年には伝説的なレーサーであるマルコム・キャンベル卿とともに、時速300マイルという、当時の地上最速記録を樹立しました。

その後、1962年にはアメリカ・フロリダ州の「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」にて公式タイマーを務めることに。

そしてその流れから誕生したのが、サーキットの名称を冠したモデル、デイトナです。自動車というものが普及し、人々がそのスピードに酔いしれた時代。サーキットで戦うヒーローたちのために作られた時計。デイトナが放つ、誇らしく華やかな雰囲気は、人類最速を目指した男たちのストーリーが、色濃く反映されたものなんですね。

宇宙への挑戦!スピードマスター

また、人類が宇宙に飛び出したのも同じ時代。ここでも共に発展を遂げたクロノグラフが存在します。

オメガ・スピードマスター。元々はカーレース用として活躍していたクロノグラフですが、その丈夫な作りが認められ、1960年代中盤よりNASA公認の装備品として採用されることに。

NASAの装備品テストには、ロレックスとロンジンも挑んでいましたが、『あらゆる有人宇宙ミッションに適している。』と評価され、テストに関わった宇宙飛行士たちは、全員一致でスピードマスターを選んだそうです。

そして1969年7月。アポロ11号にて、人類史上初となる月への着陸を共にしました。

スピードマスターのムーンウォッチという愛称は、この出来事に由来します。今現在も、月に着陸した時計は、スピードマスターただ一つです。

また、1970年4月のアポロ13号のミッションでは、機体のトラブルによってコンピューター制御が出来なくなり、窮地に陥った状態から船員たちを救ったエピソードもあります。正確に14秒間。エンジンを手動で逆噴射しなければ、地球に帰還できないというピンチ。そこで使われたのが、スピードマスターのクロノグラフ機能でした。

クロノグラフの転換期|自動巻きモデルの登場

大空への挑戦。地上最速への挑戦。そして宇宙への挑戦。人類の偉大な挑戦の歴史との繋がり。クロノグラフの魅力は、こうした背景からも感じ取ることができますね。

そして、その後の時代、クロノグラフは転換期を迎えます。1969年がその転換期のキッカケになった年ですが、そこでは3つの時計が登場しています。ゼニスのエル・プリメロ。セイコーのキャリバー6139。そして、ホイヤー、ブライトリング、ハミルトン、デュポア・デプラの4社共同開発によるキャリバー11。

この3つのモデル、これまでのクロノグラフと何が異なるかというと、クロノグラフとして初めて自動巻き機構を搭載したということ。これにより、クロノグラフはより実用的なものとなり、プロの現場以外でも使われるようになりました。

以降、クォーツウォッチの登場によって、一時期は生産がストップしてしまったモデルもありますが、機械式クロノグラフは現在も魅力的な時計として、確固たる地位を築き上げています。

まとめ

といったところで、本日は「クロノグラフ」についての基礎知識、お届け致しました。コンピューター計時の進歩により、クロノグラフが昔のようにカーレースやオリンピックなどで用いられることはなくなりました。しかし、今でもその価値が薄れず、高い人気を誇っている理由。

それは、モデルごとの誕生ストーリーであったり、見て楽しめる複雑な機械構造に対し、特別な色気のようなものを感じるからなのではないでしょうか。