2020.02.17

【基礎知識 vol.8】リューズとは|腕時計の基礎知識・基礎用語

更新

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「機能美の結晶!奥深きリューズの世界|腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。

毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくコーナー。第8回目の今日は、『リューズの形状』について、お伝えしていきます。

目次

リューズとは?

リューズとは、時計の横に配置されたつまみ状のパーツのこと。漢字で書くと、竜の頭と書いて竜頭。英語では、Crownと呼ばれます。時計の横から顔を出したような、またはちょこんと乗せられたような形状から、付いたネーミングなんでしょうね。

リューズの役割はというと、時計内部の機械を外側から操作するというもの。ゼンマイの手巻き、長針短針の操作、日付けのクイックチェンジなどを行うことができます。

操作のためのパーツ故、時計のジャンルによって、様々な大きさ、様々な形状のものが存在。例えば、ドレスウォッチとパイロットウォッチでは、使用環境が異なるため、リューズの形状も異なります。

この記事では、多種多様なリューズの形状を、個性豊かな時計とともに、ご紹介していきます。

リューズを見る際のポイント

まずは、リューズの見方。見るべきポイントを3つをお伝えしておきます。

1、大きさ
2、形状
3、ロック

大きさの違い。形状の違い。そしてロックの有無。順番通りに話していきたいところですが、単純には進められなさそうです。というのも、3要素とも、時計の使用環境とデザインコンセプトの違いによって差が出てくるものなんですが、、、それぞれがタスキ掛けのように関係しているんです。

例えば、同じ形状でも大きさが異なっていたり。逆も然り。あとは、大きさが同じでも、ロックが付いているものと付いていないものがあったり。なので、実際にどんなパターンがあるのか。どんな理由でそのリューズが使われているのか。特徴が分かりやすい時計を見ながら、解説していきますね。

リューズの大きさの違い

まずは、リューズの大きさという観点で、こちらの2本の時計をお見せしたいと思います。

左はロレックスのエクスプローラー1。右は同じくロレックスのエアキング。
同じブランドですし、デザインも似通っています。リューズの形状も同じ円筒型。腕時計でもっとも多く使われるリューズ形状です。

しかし、よく見るとリューズのサイズが異なります。エクスプローラー1よりもエアキングの方が大きく作られています。公式発表によるものではないので、あくまで個人的な考察になりますが、この2本のリューズの差は、それぞれのコンセプトの違いなのではないかと。

エクスプローラー1は登山・探検用。分厚いグローブを着用しての登山となると、そのままリューズを触ることは困難です。そのため、あえて大きくする必要はなかったのではないでしょうか。それよりも外的衝撃を受けにくい、小さなものの方が探検中の故障のリスクを軽減できます。

片や、エアキングは航空ウォッチであるため、操縦席でレザーグローブをはめたままでも操作できるように、大きなリューズが使われているものと思います。航空ウォッチは、もっと大胆に大きなリューズを使用したモデルも存在します。

画像左は、IWCのビッグパイロットウォッチ プティ・プランス。右は、ゼニスのパイロット タイプ20クロノグラフ。

どちらも45mmを超える大判ケースを使用した航空ウォッチ。ケースの迫力に引けを取らない、大きなリューズが特徴的ですね。大きいだけでなく、形状もユニーク。IWCの方は駒型で、ゼニスの方はオニオン型。

こんな感じで、リューズの大きさの話をしていたはずが、いつのまにか形状の方にも触れていかねばならない点、ご了承ください。笑

さて、大きさという点において、航空ウォッチとは逆に、小さなリューズを使用しているのが、ドレスウォッチというジャンルです。

画像左は、ヴァシュロン・コンスタンタンのパトリモニー。操作可能な範囲でギリギリまで小さくしたリューズ。シンプルでスリムなフェイスデザインを邪魔しないよう、ケースに溶け込むようなデザインになっています。

中央は、グランドセイコーのエレガンスコレクション。小ぶりながら、操作性を高めるために細長い形状のリューズを使用。実用性にこだわるブランドらしいデザインです。

右は、フレデリック・コンスタントのクラシック カレ。角型ケースにオニオン型の小さなリューズという組み合わせ。角型ケースの時計は、ケースが邪魔をしてリューズが操作しにくいのですが、このモデルはオニオン型にすることで、指への掛かりが良くなるよう、工夫されています。

ここまで、いかがでしょう。単に大きさだけでは語れない魅力、感じていただけていますでしょうか。操作性のために大きくするだけ。デザインのために小さくするだけ。それでは成り立たないのが、リューズの面白さです。

リューズの形の違い

では、続いて形状について、特徴的なモデルを見ていきましょう。先ほどお見せした、オニオン型なども特徴的ですが、こちらの六角形リューズもなかなか個性的です。

画像左は、オーデマ・ピゲのロイヤルオーク オフショア クロノグラフ。ベゼルのビズと同じ形状にすることで、デザインの統一感が図られています。ケースサイドのガード部分に埋もれた配置ですが、角があることで操作性は良好です。

画像中央は、カルティエのサントス ドゥ カルティエ。太めのリューズで、力強い印象。リューズの先端に配置されたブルーサファイアが目を惹くデザインです。

そして、画像右。シチズンのザ シチズン キャリバー0100。正確な1秒をテーマに作られたハイスペッククォーツウォッチ。角が強く表現されたリューズは、時計の正確さと堅実さ、そして60秒という時の流れを感じさせるものになっています。

六角形は、オニオン型と同じように、指への掛かりが良く、操作性が高いという特徴がありますね。デザイン面では、知性や力強さを感じることができます。

リューズロックがあるモデル

さて、続いては、ロックの有無についてです。大きさや形状とは異なるポイント。より時計の機能に寄ったポイントです。

リューズは、時計内部の機械に直接繋がっています。そのため、モデルによっては、高い防水性を確保するため、リューズにロックを付ける設計が必要になります。特にスポーツモデルなど、アクティブなシーンで使用することを目的に作られた時計は、スクリュー式のロックが付けられていることがほとんど。しかしながら、パッと見ただけではその違いを判別することはできません。

一応画像でお見せしておきますが、左は、オメガのスピードマスター プロフェッショナル。リューズにスクリューロックは付いておらず、ケースに押し込まれているだけの構造。単純な構造ですが、それでも50mの防水性能を有しています。手巻きムーブメントゆえ、マメにリューズを操作する必要がありますから、スクリューロックだと逆に不便になってしまうんですね。

そして右は、同じくオメガ、シーマスター ダイバー300M。こちらはスクリューロックが付いています。防水性能はグンと上がって、300m。このように、スクリューロックの場合、見た目だけでその有無を判別するのは困難です。

しかし、リューズロックをデザインに落とし込んでいる時計も存在します。これは、なかなか見ていて楽しい。

画像左は、パネライ ルミノール。半円型のガードに包まれた円盤型リューズは、ガードから伸びているアームによってロックされています。

画像中央は、U-BOATのキメラ。この画像ですと、リューズは見えません。見えているのは、リューズの蓋です。蓋がロック替わりになっているんですね。

そして画像右は、ボールウォッチのサブマリン。リューズは見えていますが、これも蓋でロックされています。プッシュ&スライド式のカバーで、しっかり守られています。3本、いずれもダイバーズウォッチと呼ばれるモデルです。リューズを固定して守るという構造自体を、個性豊かなデザインで遊んでいて、非常に面白いですね。

変わったリューズのモデル

さて、最後になりますが、さらに変わったリューズを持つモデル、3本ご紹介しておきますね。

左は、LIPのマッハ2000クロノグラフ。リューズというより、GoogleMAPのピンみたい。

中央は、ローマン・ゴディエのプレステージ。リューズが、、、ない。いや、実はケース横ではなく、ケース裏面にあります。裏蓋リューズという構造です。

そして右は、ユリス・ナルダンのフリーク。リューズが、、、ない。こちらは、マジでリューズがない時計です。代わりに、針の調整はベゼルを回して行います。

まとめ

以上、本日は「リューズの形状」について、お届け致しました。リューズは、時計の外装パーツの中でも、特に小さなパーツです。
しかも、機械内部と直接繋がっていることや、機能とデザインの両方に配慮しなくてはいけないことなど、他のパーツよりも制約が多い部分でもあります。

それでも、こうして見てみると、ブランドやモデルごとに異なる個性、感じていただけたのではないでしょうか。あたらめて高級時計ブランドの仕事の細やかさには、感動しますよね。