2020.04.07

【基礎知識 vol.14】ダイバーズウォッチとは|腕時計の基礎知識・基礎用語

ダイバーズウォッチとは

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「ダイバーズウォッチとは(防水時計との違い、有名モデル誕生背景など)|腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。

腕時計初心者の方向けに、毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくシリーズ。今回は、『ダイバーズウォッチ』について、お伝えしていきます。

ダイバーズウォッチというのは、読んでそのまま、ダイバー用の腕時計のこと。潜水作業に必要な防水性能と丈夫さを備えた、実用時計のことを指します。性能はさておき、このデザインが好き!という理由で選ぶ方も多い、人気ジャンルですね。

目次

この記事では、ダイバーズウォッチのスペック基準やデザイン、そして歴史的な名作ダイバーズウォッチがどんな背景から生まれたのか、その辺りにも触れていきますので、ぜひ楽しんでいってください。

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ダイバーズウォッチと呼ばれるためには

さて、ではまずは、ダイバーズウォッチとはなにかというところから。冒頭でも触れた通り、ダイバー用の実用時計のことです。しかし、その定義について詳しく知っているよ!という方は、時計マニアの方でもそこまで多くはないかと。

実はダイバーズウォッチと名乗るには、厳格な規格水準を満たす必要があります。というのも、本来は潜水時に使う時計ですから、一歩間違えると命の危険に繋がってしまいます。時計が原因で、万一の事故が起きてしまっては取り返しがつきませんよね。

そこで、日本であればJIS規格、世界であればISOで、それぞれ厳しいテスト項目を設けており、それをクリアしたものだけが、ダイバーズウォッチと名乗っていいですよとされています。

潜水時計のテスト内容

JISにしてもISOにしても、テストの内容は大きく2通り。防水時計としてのテストと、潜水時計としてのテストがあります。ダイバーズウォッチと呼ばれるためには、潜水時計としてのテストに合格する必要があります。

ちなみに防水時計のテストと、潜水時計のテスト、そもそもの内容が全く異なります。そのため、防水性能がある時計=ダイバーズウォッチではありません。

では、どんなテストをクリアすればいいのか。

こちらは、JIS規格の潜水時計のテスト項目一覧です。

テストは全部で12項目。全部説明すると長くなってしまうので、わかりやすいところだけ掻い摘んでご紹介しますね。

まず、1のタイムプリセレクティング装置。これは回転ベゼルのことです。潜水時間がきちんと計れるかというテストです。

2の判読性は、水中での時間の読みやすさ。25cmの距離で目視によって確認されます。

4の耐外力性(付属品)と、8の耐外力性(操作部防水性)のというのは、ベルトやリューズの丈夫さを測るテスト。ベルトは200Nの力を加えて、切れたり折れたりしないかを確認。リューズは横方向に5Nの力を加えたまま、水中に沈めて加圧。10分間耐えるというもの。

5は、海水を模した塩水に24時間浸して、その後すぐに錆びたり固着したりしないか、確認します。

こういった厳しいテストを乗り越えて、ようやくダイバーズウォッチと名乗れるようになります。

防水時計の誕生

続いて、ダイバーズウォッチ誕生の歴史について、防水ウォッチの誕生にまで遡り、そこからダイバー用に進化していく過程を見ていきましょう。

防水ウォッチの誕生は、1926年。かの有名なロレックス・オイスターです。

ねじ込み式のリューズと裏蓋で、カキのようにピタッと密閉されたロレックス・オイスターは、1927年ドーバー海峡遠泳の際に装備され、防水性能の高さを証明しました。

なぜこの時代に防水ウォッチが作られたのかというと、これは時計が腕時計になったからですね。

それまで懐中時計としてポケットに忍ばせていたものが、腕に巻かれるようになったのが1900年代初期。使用スタイルの変化によって、時計は日常的に雨や水に晒されるようになり、結果、防水性能が求められるようになったというわけです。

生活防水から海軍用へ

こうして誕生した防水ウォッチ、次なる進化が求められたのは、第二次世界大戦の時代。ここでは戦場で使用するためのスペックが求められました。

この時代に誕生した代表作のひとつは、パネライ・ラジオミールです。

ラジオミールは、イタリア海軍特殊部隊によって、実際の戦場で使用された時計です。この時の使用環境は、水深30m付近を水中スクーターのような小型潜水艦で移動するというもの。

長時間の水中環境下で、しかも継続的に推進力が加えられている状態でも、浸水せず壊れない時計が求められました。

イタリア海軍からの依頼を受けたパネライは、当時交流が深かったロレックスに製作を依頼。ロレックス・オイスターの防水技術を活かし、そこに独自の高い視認性を追加。1936年ラジオミールを完成させました。

この他、オメガがイギリス海軍用にマリーンという時計、これはシーマスターの原型ですが、これを納めていたのもこの時代。1940年頃の出来事です。

回転ベゼル付きのダイバーズ

で、ここまでは今のISOやJIS規格でいうところのダイバーズウォッチには、まだなっていません。ラジオミールにしても、マリーンにしても、潜水時間を計るための回転ベゼルが装備されていませんでした。

では、ダイバーズウォッチの登場はいつか。これは終戦後、1950年代に入ってからとなります。

この時代は、スキューバダイビングの道具やウェットスーツが登場し、潜水のための技術が発達。戦後普及のため、各国でサルベージ作業や、海での土木作業が盛んになっていました。

そこで誕生したのが、回転ベゼルを装備したこの2モデル。ロレックス・サブマリーナと、ブランパン・50ファゾムスです。

どちらが世界初かというのは諸説ありますが、どちらも現代ダイバーズウォッチの原型を作ったと言われるほど、偉大な存在です。

さらに深く潜る 飽和潜水用の時計

回転ベゼルを備えたダイバーズウォッチ。次なる課題は、飽和潜水への挑戦でした。飽和潜水というのは、水深100m以上の深海で作業するダイバーが用いる潜水方法です。

高い水圧下でも健康状態を保つため、専用のカプセル内で徐々に水圧に体を慣らし、それから海に出るという方法です。この時、呼吸用にヘリウムガスと酸素の混合ガスを使用するのですが、このヘリウムというのが時計にとって宿敵。

ヘリウムの分子は非常に小さく、ロレックス・オイスターの密閉性を持ってしても、時計内部に侵入してしまいます。そのまま海面へ浮上すると、減圧膨張して内部から時計を壊すという、厄介なものでした。

つまり、飽和潜水のダイバーにとっては、この問題をクリアした時計じゃないと付けられないと。

と、ここでも問題に取り組んだのは、ロレックスでした。フランスの潜水調査会社コメックスと協力し、飽和潜水にも対応できる時計を開発。1967年に発売された時計は、飽和潜水ダイバーを『海の住人』と例え、シードゥエラーと名付けられました。

サーフィンの流行で誕生したオシャレなダイバーズウォッチ

また、時を同じくして、ダイバーズウォッチは別の時流をも掴むこととなります。何かというと、アメリカでのサーファー人口の爆増。

1959年わずか250人しかいなかったサーファーは、1966年には西海岸だけで20万人というとんでもない人数に。コンペが行われれば、1万人以上の観客が押し寄せる超人気スポーツになっていました。

そこでハミルトンとIWC、当時アメリカ市場に強かったこの2社は、サーファーが好むファッションウォッチとして、比較的ライトな性能のダイバーズウォッチを作ることに。ハミルトンはアクアダイブを、IWCはアクアタイマーをそれぞれ発売しました。

ちなみに両者、生産効率にも長けたブランドです。当時の2作品は、ロレックスのようなねじ込みケースではなく、ラバー製のシーリングだけで潜水性能を実現したコンプレッサーケースというものを採用していました。

これによって製造コストを大幅に下げるとともに、デザイン面でもゴテゴテし過ぎず、よりファッショナブルに仕上げることに成功しています。

現代のダイバーズウォッチ

以降、プロ向けのハイスペックと、オシャレ向けのライトスペックに別れた、、、ように思えるダイバーズウォッチですが、現在はそのどちらの流れも汲んだラインナップになっています。

ハイスペックであり、オシャレでもある。という感じでしょうか。

ロレックス・サブマリーナにしても、オメガ・シーマスターにしても、プロ仕様の潜水性能と、オシャレでラグジュアリーなデザインが両立されていますよね。

これが現代のダイバーズウォッチに求められている魅力なんだと思います。

まとめ

といったところで、本日は「ダイバーズウォッチ」についての基礎知識、お届け致しました。

丈夫でタフ。そして高い防水性能。これは日常使用においても心強いスペックですよね。そしてそのスペック故の、分厚いケースと大胆なデザイン。このデザインに惚れ込んでダイバーズウォッチを買うというのも、大いにアリだと思います。

ぜひお気に入りの一本、探してみてくださいね。