2021.03.31

オーバーホール・修理など、高級時計の維持費っていくらかかるの?|腕時計の基礎知識・基礎用語

高級時計の維持費

時計基礎知識、今回のキーワードは『高級時計の維持費』です。腕時計を購入する際、購入時の価格だけじゃなく、その後使っていくことで発生する、修理費用であったりオーバーホールの費用であったり。非常に気になってる方、多いのではないでしょうか。ということで、実際いくらかかるのかまとめてみました。

目次

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腕時計の修理費用

ではまずは、修理費用について。

時計の修理には大きく二つあります。一つは外装、そしてもう一つは中身です。

例えば外装部分、非常にわかりやすい例で言うと、回転ベゼルが回らなくなってしまうとか。この場合、だいたいベゼルの中のギアに埃がたまっていたりとか、錆び付いていたりとかが原因です。

あと多いのは、ベルトですね。ベルトのコマが外れてしまったとかであれば、つけ直せばいいんですが、古いベルトになるとそう簡単にいかないものもある。

古いロレックスのベルト

例えば、ロレックスの古いモデル、1960年代以前のものになると、今のようなオイスターブレスではなく、金属のプレートを巻き上げて金属コマに仕上げたものを使っています。今の無垢材みたいに頑丈で壊れない造りではないんですよね。経年劣化で金属に疲労がたまり、そこから切れてしまうこともあります。

同じくバックスも力が加わる部分なので、長年使えば必ず壊れます。閉まりが悪くなってしまったり、可動部分から折れてしまったり。

レザーベルトの場合は、修理することはないですが、定期的に交換が必要になります。

また、日常使いではトラブルもつきものですから、例えば落としてしまうことだってある。その時風防ガラスが割れたり、ベゼルが外れたり、ラグが傷ついたり。

と、これらを直すのが外装の修理です。

パワーリザーブの構造

片や中身の修理にはどんなものがあるのか。時計内部の故障というのは、外装の故障と違って見て分からないケースがほとんどです。なので、これはもう感じていただくしかありません。感じ方としては、時計がちゃんと動かないというのが、一番わかりやすいかなと思います。

例えばよくあるケースの一つは、ゼンマイ切れ。ちゃんとゼンマイ巻いてるのに、時間が遅れるとか、パワーリザーブ分動き続けてくれないという不具合が生じるので、割とすぐにわかります。私も中古で購入したロレックス・シードゥエラーで経験しました。

その時はまだ購入後まもなく、保証期限内だったので無料で交換していただけましたが、もし普通にゼンマイ交換ってなると、裏蓋を開けて中の機械を取り出して、部品を交換して、清掃して元に戻すという大掛かりな作業が必要になってきます。そうなると、大体ですが6万円~8万円くらいの修理費用が必要になってきます。

で、こういった修理費用というのは、なかなか読めないものでして、どこがどう壊れるかによりますし、どんな時計なのかでも費用が変わってきます。なので、あくまで参考程度となりますが、この辺が壊れたらこのぐらいの値段だよというところで、まとめた表がこちらになります。

200818_ロレックス換金率.001

OH代というのは、裏蓋を開けて行う修理の際に発生すると思っておいてください。この費用がいくらかかるのかは、この後ご説明します。

あと注意しなければならないのは、アンティークウォッチの部品代。オリジナルにこだわると、とんでもない値段になることがあります。手巻き時代のロレックス・デイトナのブレスレットとか、ウン百万円しますからね。1960年代のロレックス・サブマリーナーのベルトも40万円くらいします。文字盤も恐ろしく高いものがあるので注意です。

腕時計の定期メンテナンス費用

では、壊れないためにはどうしたらいいのか。これはもう定期的にメンテナンスしていただくのが一番です。いわゆるオーバーホール、分解清掃というやつですね。

時計というものは歯車で動いています。歯車同士が噛み合って回転しているので、当然摩耗したり、あとは油切れを起こしたりもします。なので、定期的に分解して清掃、調整し直してあげるのが、オーバーホールという作業になります。

駆動方式別 オーバーホール料金

オーバーホールの費用は、時計の機能別やブランド、ムーブメントの機械駆動方式別で、値段がかなり変わってきます。上記はグランドセイコーのオーバーホール基本料金。駆動方式別の価格表です。

高級時計の維持費 オーバーホール料金

スプリングドライブは、ゼンマイとクォーツを組み合わせた特殊な駆動方式故、触れる技術者が少なく、高額になっています。

一番安いのはクォーツですが、クォーツの時計というと電池交換だけで済むんじゃないか?というふうに考えてらっしゃる方もいると思います。しかし、一部は歯車で動いていますから、機械式ほどではないにせよ、経年で消耗することに変わりはありません。

機能別 オーバーホール料金

続いて、機能別にみたオーバーホール料金は上記の通り。こちらはIWCのポルトギーゼというモデルのオーバーホールの基本費用です。

高級時計の維持費 オーバーホール機能別

IWCポルトギーゼは、途中でムーブメントの製造元が変更されており、その関係で新旧のオーバーホール代が異なっています。新型の自社製ムーブメントの方が高額です。

また当然ながら、機構が複雑になればなるほど高額になります。これは単純に、分解・組み立てに高い技術と長い時間を要するということがあります。グランドコンプリケーションというのは、超複雑機構を2つ以上積んだもの、例えばパーペチュアルカレンダー・スプリットセコンドクロノグラフなどがあります。ここまでいくともう時計買えちゃう値段ですね。

ブランド別 オーバーホール料金

オーバーホールの基本料金は、ブランドによっても違ってきます。こちらはオートマチック自動巻き・時分秒センター3針モデルで比較した場合の、ブランド別オーバーホール料金です。

高級時計の維持費 オーバーホールブランド別

雲上ブランド パテックフィリップ、やはりオーバーホール料金も別格ですね。ロレックスは良心的かも。笑

実例でシミュレーション

では実際、長く愛用するという前提でいくら必要なのか。定期メンテと消耗品の交換、軽度の修理もたまに発生するとと仮定して、実際にシミュレーションしてみましょう。

ロレックス エアキングの維持費

まずはロレックスのエアキングというモデル。ロレックスは新品購入時にメーカー保証が5年付いていますから、オーバーホールのタイミングは5年に一度程度と考えて良さそうです。その際、消耗品の交換が毎回、ゼンマイ切れなど軽度の故障が20年に一回あると仮定します。

これで40年使うと、維持にかかる費用は以下の通り。

高級時計の維持費 エアキングの場合

40年使うと、維持費は約60万円。エアキングの定価は67万程ですから、40年使用するには、もう一本買えるくらいの余裕を持っておく必要があります。

オメガ スピードマスターの維持費

続いて、オメガ・スピードマスターの維持費をシミュレーションしてみます。

クロノグラフ搭載の複雑機構モデルですが、オメガさん優しいのはオーバーホールのサイクルが長いこと。コーアクシャル機構といって、摩耗しにくい構造になっているので、定期メンテは8年~10年に1度で良いと言われています。

ここでは長めに10年サイクルで見ていきます。消耗品の交換はその都度あって、軽度の故障は20年に1度と仮定しましょう。

すると、40年の維持費は以下の通りになります。

高級時計の維持費 スピードマスターの場合

クロノグラフなので基本料は高いのですが、サイクルが先ほどのロレックスの倍とあって、他社のクロノグラフよりは安く済みそうです。オメガさん、素晴らしいですね。

と、ここでもやはり40年の維持費とモデルの定価が近しいことが分かりました。(スピードマスター・プロフェッショナルの定価は約73万円)

パテック・フィリップ カラトラバの維持費

さて、続いては3大時計を代表して、パテック・フィリップ カラトラバの手巻きスモセコモデルRef.5196Rの維持費、シミュレーションしていきます。

オーバーホールの基本費用は、手巻きの3針モデルということでそこまで高額ではな、、、いわけない。雲上ブランドのオーバーホール費用、侮ってはいけません。

定期サイクルは3年~5年なので、ここでは5年として、毎度消耗品の交換が発生すると仮定。レザーベルトもこのタイミングで交換するとしましょう。軽度の修理は、20年に1度と仮定します。

すると、40年の維持費は以下の通りになります。

高級時計の維持費 カラトラバの場合

やはり維持費も雲上。40年で200万円近い。カラトラバの場合、定価が高いので先の2本のように維持費と定価が近い数字にはなりませんでしたが、中古なら買える金額かも。(カラトラバRef.5196Rの定価は約280万円)

他の時計でも、40年の維持費とメーカー定価は近い金額になるのかもしれませんね。時計を購入する際、ぜひ参考にしてください。

まとめ

以上、高級時計の維持費についてお送りしてきました。時計を買う時、時計の価格だけに目が行ってると、後に維持費にやられて、手放す(売る)ことになってしまいます。ざっくりでも読んだ上で、購入を決めてくださいね。

特にローンで購入した場合は要注意。10年ローンの場合、払い終わるまでの間に2回の敵メンテナンスが来ることをお忘れなく。ギリギリのローンはダメ、絶対。