2020.02.06

【基礎知識 vol.6】ラグとは|腕時計の基礎知識・基礎用語

更新

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「時計の足?角?デザインセンスも超重要!ベルトを繋ぐパーツ『ラグ』とは|腕時計の基礎知識・基礎用語」の書き起こしです。

毎週1ワードずつ、時計の基礎知識・基礎用語をお伝えしていくコーナー。第6回目の今日は、『ラグ形状』について、お伝えしていきます。ラグというのは、時計のケースにベルトを接続する部分のことです。その形状から、角や足などと呼ばれることもありますね。

目次

ラグの種類

さて、ラグ形状ですが、ざっくり2つに大別されます。構造的な分け方になりますが、『後付け型』と『ケース一体型』の2つです。

歴史的に古いものは、おそらく『後付け型』。腕時計の起源は、19世紀初頭にまで遡り、王侯貴族用として誕生。有名どころでは、ブレゲがナポリ王妃の依頼で作った腕時計。1812年に完成したわけですが、画像が残っておらず、どんなものなのか定かではありません。

勝手な想像ですが、彫金が施された煌びやかなブレスレットに、ちょこんと小さな時計が乗っている。そんなものだったのではないかと。時計を腕に巻くというより、ブレスレットに時計がおまけ程度についている感じでしょうか。この時代は、まだラグという概念はなかったものと思います。

その後1879年、腕時計は軍用の装備品となります。
ジラール・ぺルゴが製作したこちら。ドイツ軍用の腕時計。これには、ラグがありますね。ケースから生えた小さな角のようなラグ。丸型のケースに溶接したものと思われます。

先ほど、歴史的に古いものは、おそらく『後付け型』。と言ったのは、これよりも古い腕時計の画像が見つからず、見て確認することができなかったためです。

ちなみに、世界初の市販腕時計となったのは、カルティエのサントス。これの登場は、20世紀に入ってからになります。ラグがケース一体型になったのは、おそらくこの時計が最初なのではないかと。

余談ですが、先ほどのジラール・ぺルゴのケースは、ラグを後付けしなければ懐中時計としても使えるわけですが、このサントスはケースとラグが同じ工程で出来上がってくるので、それが出来ませんよね。生まれたときから腕時計専用。懐中時計への転用は不可です。

腕時計が売れるかどうかわからない時代に、ラグ一体型ケースでの時計作りにチャレンジしたカルティエさん。凄まじい覚悟を感じますね!

後付け型のラグ

それでは、ラグ形状について、特徴的な時計を見ながら、ご紹介していきます。
まずは『後付け型』から。

製造がケースと別工程になるので、自由度高く、様々な形で表現できるのが、後付け型の良いところ。

画像左は、ピアジェのアルティプラノという時計。薄いラウンド型ケースが持つエレガントな印象を崩さないよう、個性を最小限に留めたストレートなラグ。手首のRに合わせて、斜めに溶接されており、着用感も考慮された設計です。

真ん中は、A.ランゲ&ゾーネのランゲ1。絶妙なシェイプが施され、正面から見た際にはケースが浮き出ているような錯覚を生み出しています。
ミニマルですが、非常に立体感のあるデザインですね。

そして右は、ブレゲのタイプXXI。左のピアジェに似た構造ですが、ブレゲの凄い所は、ケースの側面。コインエッジと呼ばれる加工がされていて、ここにラグを溶接するとなると、技術的にかなり難易度が高いのではないかと。

ご覧の通り、後付け型のラグを使っている時計は、古典的なドレススタイルのものが多いですね。

ケース形状に依存せず、ケースやベゼル、文字盤が作りだすフェイスデザインを邪魔しないというメリットが生かされているのだと思います。

ケース一体型のラグ

続いて、『ケース一体型』のラグ。ケースと一緒に成形するため、後付けラグの様な自由度はありませんが、丈夫で堅牢なものに仕上げることができます。なので、スポーツウォッチは一体型であることが多いですね。

画像左は、IWCのパイロットウォッチ。ケース側面のカーブから続く3次曲線を表現したようなデザイン。ラグ幅もしっかりと確保されており、見るからに丈夫な作りです。

真ん中は、オメガのシーマスター・ダイバー300M。こちらのラグは、側面以外にも角を持たせており、正面から見た場合には2つの面を見ることができます。文字盤の彫り模様と合わせて、水の動きを感じることが出来ますね。

そして右は、タグホイヤーのモナコ。こちらは、スクエアケースとの一体型。ケース同様、力強さを感じる、太く短いラグデザインです。

ケース一体型でドレス要素のあるラグ

ケース一体型の中でも、ドレッシーに仕上げられたものが存在します。
時計のジャンルでいうと、いわゆるラグジュアリースポーツと呼ばれるところですね。

画像左は、オーデマ・ピゲのロイヤルオーク。ケースを手首側に折り曲げたようなデザインで、ラグの存在を感じさせることなく、そのままブレスレットに繋がっていく。時計をパーツで分けず、丸ッと一体型にしてしまったようなデザインです。

右は、ベル&ロスのBR05ゴールド。ラグからブレスレットへの流れは、非常にドレッシーですが、フェイスデザインはスポーツど真ん中。
それでも上手くバランスが取れているのは、文字盤外周、ラグの最大幅、ブレスの最大幅と、少しずつ細くしているからかと。

ケース一体型のラグは、自由度が低い分、ケースやブレスなど、他の部分との比率までしっかり考えて設計されているんでしょうね。

変わったラグ

最後に変わり種も2本だけご紹介しておきます。

左は、ウブロのクラシックフュージョン・フェラーリ。ベルトが正面からのビス止めになっているため、ラグはベルトの付け根をすっぽりと覆う筒形になっています。ウブロはこうした複雑な形状を、様々な素材で展開することを得意としているブランドですね。

そして右は、ブローバのカーブ。ミドルケースもろとも手首側に湾曲させており、そこままラグへと繋がっている構造。どのパーツがどう接続されているのか、ぜひ分解してみたい。笑

まとめ

以上、本日は腕時計の基礎知識『ラグ形状』について、お届けいたしました。

関連する部分として、ケース形状については、基礎知識第5弾でお送りしておりますので、そちらもぜひ合わせてご覧いただければと思います。

また、次回以降でリューズやリューズガードという部分にも触れていきますので、お楽しみに!