※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「CHANEL J12 の魅力!ファッションブランドが生み出した21世紀の新世代アイコンウォッチ!」の書き起こしです。
本日はシャネルの名作ウォッチ・J12のご紹介です。
目次
シャネルJ12とは
2000年に登場し、今年で20周年を迎えたJ12。 2019年には自社ムーブメント搭載の 新作が発表され、多くの時計愛好家たちから 高い評価を得ています。 さらに2020年はそこからのバリエーション展開 ということで、白と黒を合わせたパラドックスなる 奇抜なモデルが登場しています。
また、20周年アニバーサリーモデルにも注目。 文字盤には12個のダイヤモンドが配置され、 可愛らしいココ・シャネルの イラストが描かれています。 他にも多くのバリエーション展開がありますが、 総じていえることは、どれを見ても J12であることが一目瞭然であるということ。
しかし、皆さんご存知の通り、 シャネルというブランドは、 元々時計メーカーではありません。 ファッションブランドであるシャネルは、 いかにしてここまで我々の心を掴む時計を 作り出すことができたのか。 21世紀のアイコンウォッチJ12。 その誕生と進化のストーリー、 見ていきたいと思います。
シャネルの歴史
では、まずはシャネルというブランドについて、 簡単におさらいしていきたいと思います。
「私の人生は楽しくなかった。 だから私は人生を作った。」 これはマドモアゼルこと、 創業者ガブリエル・シャネルの言葉です。 この言葉通り、彼女の理想と生き様、 それを形にしたものがシャネルというブランド。
既成概念や常識にとらわれない自由な発想で、 革命的な作品を数多く輩出。 性別そして時代を超えて、 人々を魅了し続けています。
ガブリエル・シャネルの壮絶な生き様は、 過去動画にてお伝えしております。 まだご覧になっていない方は下記の動画でチェックしてみてください。
時計ブランドとしてのスタート
そしてシャネルが、時計作りに乗り出したのは、 1980年代以降のお話。 ガブリエル・シャネル亡き後、 経営が傾きかけていたところから、 見事に復活を遂げた時代です。 復活の立役者は、かの有名なアートディレクター カール・ラガーフェルド。 フェンディやクロエで腕を振るった名将です。
そしてこれと同時期、 カール同様の才覚を持つ男がもう一人。 当時シャネルで広告ビジュアルなどを担当していた アートディレクター ジャック・エリュという人物。
新設となる腕時計部門を任されたジャックは、 1987年に女性用の腕時計プルミエールを発表。 1990年にはマドモアゼルを発表し、 見事に成功を収めています。
女性モデルの展開が開始
そしてそのまま女性用の時計を展開し、 ファッションアイテムとしての拡充を図るかと 思いきや、、、 ブランドが次なる一手として臨んだのは、 男性用腕時計の開発。
女性らしさを求めてきたファッションブランドが挑む 本格的なメンズウォッチ。 まさに既成概念を覆す、大きなチャレンジです。 このプロジェクトは、 コードネーム『エクス・ニヒロ』 ラテン語で、ゼロから生ずる と称され、プルミエールの時と同様 ジャック・エリュ主導で1993年にスタートしました。
コードカラーを表現するための素材選び
新しいメンズウォッチを作るにあたり、 まずジャックが挑んだのは、外装素材の選定です。
なにを選んだのかというと、皆さんご存知の通り。 ハイテクセラミックという素材。 セラミックというのは、いわゆる陶磁器のこと。 古くは自然の土に、砕いた岩、 そして植物の灰を掛けて高温で焼いたもの。
日本だと、有田焼や備前焼が有名ですね。 中国の青磁や白磁も有名です。
これが近年工業製品化されたのが、 ファインセラミック。 自然のものを使う焼き物よりも、 丈夫であり、色味が均一であることが特徴です。 食器類の他、刃物にも使われています。
そして丈夫さ、審美的な均一さで、 その上をいくのがシャネルのハイテクセラミック。 工業製品の枠を超え、 まるで宝石のような輝きを放つこの素材は、 ステンレススチールよりも硬く、 経年で色褪せにくいという特徴も備えています。
知りたいのは何を選んだのかよりも、 なぜそれを選んだのかの方ですよね。 ここはあくまで考察になるんですが、 シャネルらしさを表現するのに、 最も適していたのが、 ハイテクセラミックだったのではないかと。
どういうことかというと、 シャネルのコードカラーは、ブラックとホワイトです。 これはガブリエル・シャネルが幼少期から 美しいと感じていたカラーなんですよね。
修道院という環境で育ったことが 強く影響しているそうです。 このブラックとホワイト。 時計としてどちらも実現できる素材は、 セラミックの他にありません。
もちろん文字盤カラーだけで、 ブラックとホワイトを作ることもできますが、 そこで妥協はしたくない。 そんな強い思いがあったのではないでしょうか。
トレンドに対する反骨精神
また、当時のトレンドに対する反骨心。 これも強くあったものと思います。
シャネルと言えば、 いつも時代のトレンドに真っ向から立ち向かう 反骨精神あふれるブランド。 淑女たちが、 華やかなロング丈のドレスを纏っていた時代。 真っ黒なドレスのひざ下と袖をカットしてしまった という逸話は有名なお話。 腕時計でも、 このシャネルらしさを求めたのでしょう。
1990年代の腕時計業界といえば、 若年層に向けたファッショナブルで スポーティな時計がトレンド。
時計の5大ブランドで言うと、 ブレゲのマリーンが、 『若い世代に訴求する 新しいコンセプトを持つ時計』 として、1990年に登場。 そして、パテック・フィリップのアクアノートが、 『若者向けのラインナップ強化』 として、1997年に登場しています。
他のトレンドウォッチも、 多くはステンレススチール製。 ハイエンドなバリエーションとしては、 ゴールドやプラチナが主流。 ここに切り込むためには、 同じような素材ではダメなんだと。 シャネルというブランドが、 普通なものを出したら、 それはもうシャネルではないと。
単なる素材ではなく、 ブランドアイデンティティを表現するため、 ハイテクセラミックというチョイスは、 欠かせないものだったのではないでしょうか。
ただ、その道のりは非常に厳しいものでした。 なにせセラミックは、 それまでごく一部のブランドの、 ごく一部の時計でしか使われなかった素材です。
それをシャネルというブランドが求めるレベルまで 引き上げるというチャレンジ。 例えばブレスレットのコマは、 一つ一つを丸く磨き上げ、 まるでジュエリーのように仕上げる。 決して妥協のないチャレンジ。
1993年から開発がスタートし、 J12が発売されたのは2000年ですから、 いかに時間を要したか、 お分かりいただけるかと思います。
メンズウォッチとしてのデザイン
そしてジャック・エリュが挑んだのはもう一つ、 メンズウォッチとしてのデザインですね。 プルミエールやマドモアゼルなど、 女性用の時計で成功したからと言って、 メンズでも上手くいく保証はどこにもありません。
しかし、ジャックは、 全く臆することなく、J12のデザインを 書き起こしていきました。 その自信は一体どこから来るものなのか。
それはまさに彼が積みあげたシャネルでの キャリアに他ならなかったのではなかろうか。
ジャックは18歳でシャネルに入社。 創業者ガブリエル・シャネルの現役時代、 ともに走ってきた仲間とあって、 シャネルのデザインを知りつくしていたんですね。
かくしてジャックは、 ガブリエル・シャネルのこの言葉。
“ ファッションとは、 直ちに使える面白いアイデアで構成されている。 対してスタイルは、 仮にそれが違うフォルムを帯びたとしても、 永遠に残る。 “
この教えを具現化するため、 ハイテクセラミックという素材を推し出し、 ベースデザインはあくまでシンプルに抑える というアプローチを取りました。
そしてそこに男性っぽさを表現するための、 細かいデザイン乗せる。 線路を模した文字盤中央のレールウェイや、 船の操縦桿を思わせるベゼル。 クラシックカーのダッシュボードメーターのような アラビア数字のインデックス。
セラミックによってスタイルが確立されたからこそ、 細部の遊びが活きてくると考えたわけですね。 ちなみにJ12というモデル名も、 ヨットレース・アメリカズカップで実際に使用された 船の名前から取っているとのこと。 ここにも男子っぽさがありますね。
こうして2000年に登場した初代J12。 初めはブラックのみの展開でしたが、 2003年にはホワイトが追加され、 その後クロノグラフや、トゥールビヨンなどの 本格的な複雑機構モデルも登場しています。
しかし、やはりどれを見てもJ12と分かるのは、 J12という時計がファッションではなく、 スタイルであるから。 まさに、 “ 違うフォルムを帯びたとしても、 永遠に残る。 “ この言葉通りのものとして、 完成されたわけですね!
まとめ
といったところで、本日は シャネル J12 について、お送りいたしました。 残念ながら、J12の生みの親である ジャック・エリュ氏は、 2007年にこの世を去ってしまいました。 2013年以降、シャネルのウォッチデザインは、 アルノー・シャスタン氏に引き継がれています。
彼もまたシャネルを愛する男ということで、 今後の展開も楽しみですね!
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