2021.06.07

ハミルトンとは|自由と開拓 アメリカン史と共に歩む時計ブランドの歴史

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「ハミルトンの歴史|アメリカ史と共に時を刻む腕時計」の書き起こしです。

ハミルトンの歴史についてお送りしていきます。ハミルトンといえばアメリカンウォッチですよね。今現在は、スイスのスウォッチグループ傘下に属しているのでスイスウォッチですが、元々発祥はアメリカ。1800年代後半にできたブランドです。

↓動画でもご覧いただけます。

アメリカの時計と言うとなかなか馴染みがないと言いますか、時計と言うとやっぱりスイス、次いでドイツ、フランス、日本のイメージかと思います。

しかしアメリカンウォッチ、実はすごくて、1800年代後半から1900年代前半にかけて、実はヨーロッパの売り上げを抜いていた時期があるんです。なので、時計史を語る上で、アメリカの時計史というのは、欠かせないものなのです。

そしてハミルトンというブランド、アメリカの時計史と言うか、アメリカ史そのものを語る上でも欠かせないブランドです。この辺りも含めて、お伝えしていきたいと思います。

目次

ブランドの誕生

ではまずはブランドの誕生から。これまでいろんな時計ブランドの歴史お送りしてきていますが、今回調べてみてびっくりしたことがあります。なんとハミルトンというブランド、創業者の名前が分からないんです。

どの方が創業したかという記載が一切ない。通常であれば創業者の名前が出てきて、何年に誕生しましたよという形で、公式情報があったりするのですが、ハミルトンというブランドは、最初から会社として登場しています。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

前身となる会社ができたのは1874年頃という風に言われております。アメリカ ペンシルバニア州 ランカスターに、アダムス&ペリー時計製造会社が設立され、そこからランカスターペンシルバニア時計が設立されたのが1877年。

そして1879年に再編成されて、ランカスター時計となって、1886年にキーストンスタンダード時計というところに買収されます。そして1890年、キーストンスタンダード時計が倒産して、1892年その資産を元にハミルトン時計が設立されました。

アメリカの産業

アメリカの時計史というのは1800年代くらいまでにある程度の形ができています。これはアメリカの国の特性上という形になるんですが、アメリカは自由の国。移民を受け入れる国ですよね。そういったお国柄といったところで、1800年代までの間にヨーロッパからの移民がたくさん来たわけです。

時計の作り方を知っている人、そして時計を実際に使っていた人達が、移民としてやってきたんです。需要と供給、どっちもヨーロッパから移民として来たという形になるんですよね。

最初は柱時計の作る職人さん達がその中に紛れていたということで、貴族の方たちに向けて時計作りを始めたというのが、アメリカ時計史の走りになります。

柱時計を作るというのは、かなり高度な技術を要します。中の機構は非常に複雑ですし、外側の構成
といいますか、木の素材であったりとか、家具職人としての腕も必要になる。

ということで、この辺りを簡素化して、時代と共に掛け時計へと変化していきます。それが1800年代以降の話です。

こういった形で、アメリカの時計産業というのは、スイス、ドイツ、イギリス、この辺りからやってきたものになりますので、いわゆるスイスのように家族経営の工房が昔からあって、それが分業で時計作りをしていたみたいな文化が元々あったわけではないんですよね。

じゃあアメリカのものづくり。どういったところが発展していたのか。実はアメリカのものづくりというものは、非常に早い時代から大量生産に目をつけており、1798年には綿の織物の大量生産に成功しています。

そこから規格標準化というものが行われ、工場での大量生産広く応用されていきます。例えば農具、タイプライター、ミシン、自転車、ピストルなどです。この辺りが大量生産の歴史、その走りとなったものです。

クロックそして懐中時計の登場

そんな中、クロック(いわゆる置時計)と掛け時計が、1802年から登場します。最初は水力を動力として、年間6千本ほどのクロックを作っていたそうです。

やがてそこから、ムーブメント作りの企業が誕生。さらに外装を作る企業、いわゆるキャビネットと呼ばれる木製型枠の大工たちが登場します。そしてメーカーと販売店とに分かれて、流通がシステム化されて行ったのが、19世紀中頃までの出来事です。

1854年には、ボストンウォッチカンパニーという会社が設立されます。アメリカ式の工場生産という形で、初めてポケットウォッチの工場を作った会社です。アーロン・デニソンという方が設立した会社ですが、この方イギリスとスイスを見学に行き、懐中時計製造ノウハウを持ち帰ってきたそうです。

戦争による需要拡大

そしてアメリカこの後は、戦争の時代に入るわけですね。1861年から1865年まで、南北戦争というものがあったわけですが、この時兵士用にポケットウォッチの需要が急増します。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

ボストンウォッチカンパニーは1859年、アメリカンウォッチカンパニーと名前を変え、アメリカのための時計作りを行う会社になります。

この時、年間10万を超えるポケットウォッチを製造していた、という記録が残っています。

巨大ウォッチメーカーの登場

そしてそこから、アメリカンウォッチの3大メーカーが登場したのが、この後の時代になります。1864年エルジン、1885年ウォルサム、そして1892年にハミルトンと、次々に大きなブランドが誕生したわけです。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

皆さんご存知の通り、アメリカは非常に資源が豊富な国です。時計に使う金属材料が自給できることも、大きな強みでした。

そこにアメリカンウォッチの3大メーカーが登場したことによって、ヨーロッパの売り上げを抜いていくという時代が、この後到来するわけでございます。

鉄道と共に発展したアメリカンウォッチ

アメリカンウォッチの発展を大きく後押ししたのは、1880年代から行われた北米全土に渡る鉄道網の整備です。アメリカは陸続きになっていますから、この鉄道網が敷かれたことで、人々の生活は非常に便利になっていきました。

この鉄道、安全な運行に欠かせないものがあります。それは見やすく正確な時計。この時計がないと、運転士同士正確な時間ですれ違うことができず、大惨事に至ってしまうわけです。

実際に1891年 キプトンの悲劇というものが起こっていますよね。これは以前ボールウォッチというブランドの歴史においても紹介したものになるんですが、2つの列車が正面衝突してしまい、多数の死者を出したという大きな事故。

キプトンの鉄道事故

http://www.ballwatch.com/

この時、運転士の片方は、時計はそもそも狂ってて当たり前だと時計を見た形跡すらなかったそうなんですよね。そしてもう一人の時計はと言うと、案の定狂っていたと。正確な時間を読まないそして読めなかったことで、事故が起きてしまった。

これはいけないということで、そこから鉄道関係者の間で、正確な時計をしっかり作っていこうじゃないかということになり、ボールウォッチの創業者ウェブ・C・ボールさんが検査官として就任するわけです。

そしてこの方、1893年にシステムを開発するんですよね。それがレイルロード・アプルーブドというもの。鉄道時計の基準を決めたルールブックみたいなものです。そこにはたくさん基準がありましたが、中でも最も厳しいとされていたのが、週に30秒以上狂ってはいけないという規格でした。

当時1800年代後半。この時代に週差30秒というのは、非常に難しかったんです。しかも揺れる列車の中で実現するというのは、非常に難易度が高かった。

この基準を見事最初にクリアしたのがハミルトンとウォルサムなんですよ。ということでここから鉄道時計として、ハミルトン、ウォルサム、ボールウォッチと、この辺りが発展していきます。

軍用腕時計の登場

そしてハミルトンにとって次なる転機。それは1914年アメリカ陸軍将校パーシング氏による、ハミルトンへの依頼。軍用のポケットウォッチを作ってくれないかという依頼でした。これがアメリカミリタリーウォッチ史の始まりとなります。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

依頼を受けたハミルトン、第一次世界大戦の前1917年に今現在のコレクション カーキの原型にあたるハックウォッチを開発します。ハックウォッチのハックというのは、ハック機能のハックです。

ハック機能というは何かと言うと、リューズを引いた際に秒針が止まる機能のこと。秒針が止まることによって、秒単位での時刻合わせが可能になるものです。このハックという言葉、実は軍人同士チームの中で同時に時間を合わせる際にHack!という掛け声を使っていたことに由来するそうです。

このハック機能というもの、誰が発明したのか調べてみたんですけど、見つかりませんでした。複雑機構ではなくて、リューズ引いた時に輪列からぜんまいを外すという単純な機構になるので、特に誰が発明したとかではなくて、おそらく機械式時計が作られる中で、自然にできていったものなんだろうなと思います。ただ名称由来、ハックという名前が実はアメリカ軍が初めだった。ここは結構意外でしたね。

これに関連するかどうかというところはちょっとわからないですけれども、いわゆる3大ブランドとか5大ブランド、この辺りのドレスウォッチにハック機能が付いていないというのは、もしかしたらここが関係するのかなとも思いました。

ドレスウォッチはミリタリーウォッチではないですからね。そういう意味であえてハック機能をつけてないのかなあというのも、これを調べてみてわかったことですね。

さて話を戻しまして第一次世界大戰。アメリカ参戦ということで、そのタイミングで腕時計が製作できていたというのが、アメリカ軍にとっては非常に良かったことなんですよね。兵士にとって両手が自由になる時計というのは、必要不可欠だったんだと思います。

そしてその後1942年第二次世界対戦が始まるわけですが、その時には一般向けの製造をストップして、1945年までの間になんと100万本もの腕時計をアメリカ軍に納入していたという。ハミルトンの生産能力の高さ、ここでお分かりいただけるかと思います。

また、戦場でハミルトンの時計が使われていたのと同じ時期、1918年ワシントンD.C.とニューヨーク間を結ぶ航空郵便用の公式時計としても、ハミルトンの時計が使われていました。

ハミルトンとハリウッド映画

そしてもう一つ。こちらはハミルトンこの後の発展に大きく関わるものになります。1930年代以降、ハミルトンの時計は、映画劇中でも多く使用されることとなります。

この映画の歴史というのも、アメリカの歴史を語るうえで欠かせないものですよね。1927年ジャズシンガーという長編の映画、トーキー映画の最初と言われております、トーキー映画というのは音声と映像、これを同期させた作品です。声と音楽がある今のスタイルの映画と思っていただければ間違いないと思います。

これの長編映画ジャズシンガーというものが公開されたのは1927年。そして1930年代から1940年代にかけて。この時代がハリウッド黄金期と呼ばれる時代です。

風と共に去りぬ、そしてバグダッドの盗賊。この辺りがこの1930年代から1940年代に出来た映画になるんですが、まさにこの時代ハミルトンの時計が映画の劇中で多く使われ始めた時代になります。

20世紀前半というのは、戦場で使われたこととそして映画によって使われたと。この二つの軸によって、ハミルトンというブランドの知名度大きく伸びていきました。

そして終戦後戦場で使われることがなくなったハミルトン。ここからは映画、テレビ、ミュージカルなどなど、エンターテイメントの世界でさらに有名になっていくこととなります。

終戦後の時代というのは、まさにエンターテイメント。おしゃれでかっこいい時計というものが求められた時代になります。このタイミングに合わせて、ハミルトンはデザイナー リチャード・アービブを招聘。1957年にベンチュラを登場させます。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

ベンチュラは、デザインとしては特徴的なものでもありますし、機能としても実は特徴的だったんですよね。1957年、まだクオーツウォッチが登場する前の時代。この時代に電池式の時計として登場したのが、実はこのベンチュラはという時計になります。

電池を動力源に、そこから輪列へとエネルギーを伝えて針を動かして時間を刻むという機構。当時最先端の技術。これをデザインとしても表現したのがベンチュラの凄いところです。

そしてこのベンチュラをさらに有名にしたのは、エルヴィス・プレスリーが愛用したこと。映画劇中でも着けていましたし、ライブ中にも着けていたことで、ベンチュラはヒットモデルとなっていきました。

このベンチュラというモデル、今現在も映画でよく使われているモデルですよね。直近でいうとMIBの最新作で使われていたかと思います。

SF映画とエレクトリックウォッチ

そしてその後の時代1970年代。また新たな時計を開発します。それがLEDを使ったデジタルウォッチ
パルサーというモデル。

そもそもLEDというものが普及したのは2000年代に入ってからですから、1970年代にこれを時計に使っていたことが、まずとんでもなく凄い技術なんですよね。なのでこのパルサーというモデル登場した時は、今で言う100万円クラスの時計だったことで、セレブの間で大人気のモデルになったそうです。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

1970年代のエレクトリックウォッチこれがヒットした理由。やはりそういった背景には、映画の影響が強くあるものと思います。70年代80年代というと、SF映画のブームです。スターウォーズが公開されたのは1977年。そこからエイリアン、そしてターミネーター、バックトゥザフューチャーなどの名作が生まれたのが、この70年代80年代なんですよ。

それに先駆けてLEDパルサーというモデルを出していた。今振り返ると素晴らしい先見の明だったのではないでしょうか。

現代に続くアメリカンヘリテイジ

今見ていただいた歴史の中で登場するモデル、今現在も続いているコレクションは、例えば軍用時計として使われていたカーキというコレクションで展開されています。そのカーキというコレクション、アビエーション 空のモデル、そしてネイビー 海のモデル、そしてフィールド 陸のモデルと3パターン出ています。

ハミルトンとは 時計ブランドの歴史

https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

当時アメリカ軍用に作っていた時にも、使い手によって分けていたんですよね。空軍用なのか海軍用なのか陸軍用なのか。そして今現在はないんですけれども将校用オフィサーというコレクションもありました。当時のアメリカ軍用に作っていたものを今でも再現して作っています。

そして大ヒットモデル・ベンチュラ。最初エレクトリックウォッチ、電池式の時計として登場した後、クォーツウォッチが登場したことでクオーツ化されて、そして自動巻きのモデルも今は登場してます。特徴的なデザインのまま、今現在も残っています。

スウォッチグループへ 供給力のさらなる強化

そして今現在ハミルトンは、スウォッチグループに属しているということで、もともと生産能力の高いブランドではあるんですが、スウォッチグループに属したことで生産能力さらに上がっております。

なので今現在ハミルトンの時計と言うと高級時計というところまではいかない価格帯。割とカジュアルな価格帯で本格的な時計が買えるということで、そこも大きな魅力になっています。

価格がカジュアルなので、ファッション感覚で時計求める方たくさんいると思うんですが、ぜひこの記事を最後までご覧になっていただいた皆様は、ハミルトンの時計を眺めるときは、アメリカの歴史がここに繋がってるんだなということを思っていただいて、手に取っていただけると幸いでございます。

ハミルトンというブランド。これから先もアメリカンスピリット、アメリカの歴史を強く反映させたモデル、多く展開してくるものと思います。そこも楽しみにしたいところですね!