2019.04.13

IWC の歴史|パイロットウォッチ、ポルトギーゼなど、人気モデルの誕生背景とは

更新

パイロットウォッチやポルトギーゼなど、名だたる人気モデルを多数ラインナップしているスイスの高級時計ブランド『IWCことインターナショナルウォッチカンパニー 

ブランドの誕生から、昨年で150周年ということで、IWCの魅力を歴史とともに辿っていきたいと思います 

目次

IWCとは?

ではまずは、IWCというブランド、あまりご存知ないという方のために、ブランドの特徴について紹介していきます。 

 IWCは、1868年にスイス・シャフハウゼンで誕生した時計ブランドです。現在のラインナップは、パイロット・ウォッチ、ポルトギーゼ、インヂュニア、アクアタイマー、ダ・ヴィンチ、ポートフィノの6ライン。いずれも時計好きであれば聞いたことのある名前かと思います。 

 2000年より、ヴァシュロン・コンスタンタンやカルティエ、パネライなどが属する一大企業グループ・リシュモンの傘下となり、コストを抑えながらも良質な腕時計を多数輩出し続けています。 

2018年にはブランド150周年ということで、各ラインから 150イヤーズ として記念モデルが登場したことは、記憶に新しいです。

アメリカ人時計師によって創業

そんな、IWCですが、創業者は実はスイスではなく、アメリカ人です。フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズという、アメリカの時計技師なのですが、当時アメリカ向けに高品質のポケットウォッチを製造するという目的のため、27歳という若さで本場スイスに渡って同ブランドを創業しています。 

ライン川の水力発電と、スイスの優れた時計技術により、IWCは初期から非常に優れたポケットウォッチを製造していたそうです。 

そしてこの時、手を貸した人物が同じくスイスの高級腕時計ブランドH・モーザーの創業者であるハインリッヒ・モーザーということで、こうした繋がりが見えるのも、歴史の面白いところです。 

社屋は1875年に作られて、現在も本社として使われていますその時べストと判断した位置に、いまもそのまま残しているという点、モノや思想を大切にする姿勢が感じられ、時計作りにも表れているような気がします。 

さて、そこから数年。1880年には、ジョーンズが帰国。その後はスイスの実業家であるラウシェンバッハ家が事業を引き継ぎ、1899年に腕時計の開発をスタートします。 

パイロットウォッチ、ポルトギーゼ|ブランドの繁栄期を支えた人気モデル

IWCの経営権は、創業者であるジョーンズ氏から、ラウシェンバッハ家に移ったわけですが、その後もあまり時間を置かずに、再度経営が移動しています。 

ラウシェンバッハ家の娘 ベルタ・マルガレータの結婚相手であるエルンスト・ヤコブ・ホムバーガーへと移るわけですが、実質腕時計の本格的な開発は、彼が事業を継承した1905年以降となります。 

余談ですが、ベルタ・マルガレータの姉の旦那は、あの有名な心理学者カール・ユングだそうです。

ブランドの歴史的には、妹の旦那ホムバーガーの方が重要な気がしますが、公式サイトの歴史コーナーでは、ユングの方がフィーチャーされていました。 

話を戻し腕時計の開発ですが、ラウシェンバッハ家時代は、ポケットウォッチのムーブメントを用いて腕時計を作製していましたが、ホムバーガー時代になってから、新たに腕時計専用の小型ムーブメントの開発に着手。1915年~1931年の間に、3つの専用ムーブメントを完成させます。 

現在の人気モデルであるパイロットウォッチは、この技術を用いて1936年に登場しました。 

また、同じく人気モデルであるポルトギーゼもこの時代に登場した作品です。ポルトガルの商人からの『大きくて高精度の時計が欲しい』という依頼を受け、あえて高精度のポケットウォッチ用ムーブメントを使用して作製。現在も大型ケースで展開されているのは、ここから続いている伝統なのです。 

その後、第二次世界大戦後は、電化製品が普及したことに合わせ、腕時計には耐磁性能などさらなる技術が求められるようになりました。 

この時期、IWCは、業界でも腕利きと名高いの時計技師アルバート・ペラトンを技術責任者として迎えています。 アルバート・ペラトンは両方向巻き上げを可能にした『ペラトン式自動巻き機構を生み出した人物でIWC以前はヴァシュロン・コンスタンタンの技術者でした 

迷走のクォーツショック時代から機械式時計の復活へ

ペラトン就任後、1967年にはダイバーズモデルとしてアクアタイマーを発表していますが、その2年後の1969年にはクォーツショックが待ち構えていました。 この時代、スイスの機械式時計ブランドはどこも苦しみました。IWCも例にもれず、迷走時期を迎えることになります。 

クォーツショックと同年、ベータ21というクォーツムーブメントを出してみたり、1970年代にはETAムーブと呼ばれる量産型の機械式ムーブメントを採用したり。 

これまで築いてきた技術を一旦おいてでも、低価格化の波に乗らざるを得ないという状況下で、日本で安価量産されるセイコーウォッチの爆発的な躍進にペースを奪われていました。 

そんな状況で消えていったブランドも多くある中、IWCは機械式時計にしかできない技術への追求を止めることなく、1980年代後半からは複雑機構の開発を成功させています。  

1985年には永久カレンダーとクロノグラフを搭載したダ・ヴィンチを発売。このモデルは、500年先まで日付がプログラムされた、IWC初の複雑機構モデルです。 

さらに1990年には永久カレンダーとミニッツリピーターを搭載したグランドコンプリケーションを開発。 1993年には、永久カレンダー、ミニッツリピーター、そしてトゥールビヨンまで搭載した超複雑機構モデルも発表し、業界にその存在感を強くアピールすることに成功しています。 

ちなみに少し戻って1978年から1982年。この時期、経営権ドイツの企業に渡っているんですがドイツらしくフェルナンド・アレクサンダー・ポルシェ(あのポルシェ911のデザイナー)のデザインでいくつか新作モデルを発表するなど、デザイン面での革新も図っています 

IWCの歴史、登場人物が多くて、しかもみんなキャラが濃いですよね。 

近年とこれからのIWC

2000年以降、リシュモングループに参加してからは、見慣れた感じの人気モデルがズラリ 今も中古市場で見ることができる、皆さんご存知のモデルも多いかと思います。 今年2019年は、パイロットウォッチシリーズでスピットファイア等の新作が多数、発表されましたね。 

さて、IWCの歴史、見てきましたけれども、窮地に陥って奇跡の復活!とか、このモデルがキッカケで大躍進!みたいな、わかりやすく大きな出来事がないという印象でした。 いや、きっとあるんでしょうけど、そこをあえて出さないあたりがIWCらしくもあります。 

経営権が度々変わりながらも、堅実で無駄を嫌う精神は、創業初期からしっかりと引き継がれており、言い方を変えるならば、良い経営者恵まれたブランドというふうにも表現できるかと思います。 

IWCの時計をご覧になるときは、いつ誰が関わった時代のモデルなのか、歴史的経緯をイメージしながら、ぜひ楽しんでみてください。