2019.03.24

モーリス・ラクロア MAURICE LACROIX とは|ブランド誕生の歴史・アイコンヒットまでの軌跡

更新

自社でのムーブメント開発を起点に、個性的な時計をラインナップしているスイスの高級時計ブランド『モーリス・ラクロア MAURICE LACROIX』。ブランドの誕生から、現在の人気シリーズであるアイコンシリーズの登場まで。モーリス・ラクロアの魅力を歴史とともに辿っていきたいと思います。 

目次

モーリス・ラクロアとは?

ではまずは、モーリス・ラクロアというブランド、あまりご存知ないという方のために、ブランドの特徴について説明していきます。

モーリス・ラクロアは、1975年に誕生したスイスの新興ブランドです。新興ながら、確かな技術と独創的なデザインを武器に、短期間で販路を広げ、日本の時計ファンの間でも知名度・人気ともに高まりつつあります。 

現在のラインナップは大きく6種類ありますが、フラッグシップモデルとなるのは、こちらのアイコンシリーズ。 高級メゾンウォッチのような美しいデザインと、自社で一貫製造するマニュファクチュールならではの優れた機能を備えながら、10万円以下という価格帯で幅広い層に支持されています。 

アイコンは、2016年に登場した新しいシリーズで、先行して発売されたクォーツ式のモデルが人気となったことで、2018年には自動巻きムーブメント搭載モデル、こちらは20万円弱です。こちらも追加ラインナップされています。

日本での流通量はまだまだ多くはありませんが、ハイブランドがどんどん値上がりしている近年、入手ハードルが高すぎないスイスブランドの一つでもあるため、少しずつ認知度が上がっているように思います。最近は時計雑誌などでも、良く見かけるようになりましたね。 

ブランド創業の背景

これからの展開が楽しみなブランド、モーリス・ラクロア。ブランドとしての誕生は1975年ですが、会社としての歴史は1889年にまで遡ります。

デスコ・フォン・シュルテスという、もともとは絹などの貿易をしていた会社なんですが、第二次世界大戦後の1946年頃からスイスの時計を日本やアジアに売るという仕事をしていました。

日本との繋がりはまさに絹貿易時代で、1928年に富岡製糸場との取引契約を交わしたことから始まったようです。

 時計の輸出ビジネスが軌道に乗った後、1961年には、腕時計の組み立てを行う工場を傘下に収め、文字盤、ケース、ムーブメントの製造をスタート。そして1975年に、自社ブランドであるモーリス・ラクロアを誕生させました。 

1989年には、さらに工場を買収・拡大。1990年にはアイコンシリーズの原型にもなった、『カリプソ』をリリース。1992年には、より高度な製造技術を要する『マスターピース』というモデルをリリースしています。 

貿易会社から腕時計ブランドへの変革期

モーリス・ラクロアは、もともと貿易会社ということで、販路の拡大に長けていたことで、製造においても果敢なチャレンジができる環境にありました。要するに売る力があるので、創ることにコストを割けるというわけです。

1990年代後半からは、複雑機構のムーブメントを搭載した面白いモデルが多くリリースされています。 有名どころ、いくつか紹介していきます。

まずはレトログラード式のカレンダーを搭載したモデル。レトログラードとは、時計の針の動き方を反復式にした機構のことですが、有名どころではヴァシュロン・コンスタンタンやランゲ&ゾーネなどの雲上ブランドに用いられている複雑機構です。

完全な円運動ではないため、文字盤という限られたスペースの中に複数の針を配置することが可能です。2003年には、レトログラードを文字盤内に2つ収めた『ダブルレトログラード』を発表しています。

そして、不思議な文字盤が気になる『マスターピース・スクエアホイール』や『マスターピース・ミステリアスセコンド』。どちらも非常に個性的なモデルです。

単に複雑機構を備えるという感じではなく、デザイン・表現のために複雑機構を用いている。そんな遊び心溢れる時計作りがこのブランドの魅力のひとつだと思います。 

アイコンのヒットでブランドイメージを一新

さて、ここまで見てきた感じ、時計の作り手としてはとても興味深いブランドではありますが、いまいち知名度に繋がる動きが無いように思えます。

 例えばロレックスで言えばドーバー海峡を泳いで渡ったとか、オメガならNASA公認で月に行ったなど。新しいブランドなので、そこまではないにしても、ウブロのようにFIFAワールドカップのパートナーになるなどです。

モーリス・ラクロアは、そうした知名度アップのためのPR活動がいまいちです。 2014年にFCバルセロナとパートナー契約を交わし、パートナーモデルも発売していたようですが、今一つ記憶にないのは、あまり目立つ施策ではなかったからかと思います。

そんなモーリス・ラクロアですが、日本において、時計雑誌で良く見かけるほどの有名ブランドになったのは、間違いなく『アイコン』のヒットがあります。 複雑機構を備えたスクエアホイールやレトログラードでは、やはり超有名ブランドとの勝負が難しかったのでしょう。

いくら技術が優れているとはいえ、価格もそこそこする無名ブランドとなると、目の肥えた日本の時計ユーザーにとっては、購入検討の土台にすら乗らなかったのだと思います。

その点アイコンは、シンプルな3針デイト構造。ドレッシーなアナログウォッチで、仕事でもプライベートでも使いやすい!そしてスイス製なのに価格が安い!ということで、「人と違う時計が欲しい」というライトユーザーに、見事にヒットしました。 

クォーツ式とはいえ、新品で10万円を切る価格設定は、スイスウォッチでは異例な安さですよね。例えばオメガのシーマスター・アクアテラ・クォーツなら25万円くらいしますからね。 かくしてモーリス・ラクロアは、アイコンという一本の時計で知名度アップを成功させてしまったというわけですね。

モーリス・ラクロアのこれから

現在は、2018年にアイコン・オートマチックが登場し、自動巻きの腕時計を求めるユーザーにまで、ファン層の拡大を狙っています。 近年はモーリス・ラクロアのような、新興ブランド・マイクロブランドの活躍が目立ってきているように思います。

その背景には、バーゼルワールドやジュネーブサロンのような、大規模な展示会に頼らずとも、SNSを通じて魅力を発信できるようになったことがあると思います。 2019年以降、モーリス・ラクロアは、本職である複雑機構のモデルをどんな方法で、どこまで有名にしていくのか、ぜひ期待したいですね!