2019.03.16

チューダー TUDOR とは|ブランド誕生の歴史から日本正規進出までのストーリー

更新
チューダー歴史

2018年日本への正規進出を果たした、スイスの高級時計ブランド『チューダー TUDOR』。ロレックスの廉価版としてスタートした同ブランドですが、現在は独自の地位を作り上げています。

ブランドの誕生から、現在の人気シリーズであるヘリテージシリーズの登場まで。チューダーの魅力を歴史とともに辿っていきたいと思います。

目次

チューダーの起源

チューダーの創業者は、ロレックスと同じハンス・ウィルスドルフ氏です。1926年に商標登録された後、1946年に会社化され、本格的な稼働をスタートします。

実はこの時代、ロレックスは思うように売れず、どうしたらもっとたくさんの人に知ってもらえるのか?ということに真剣に悩んでいました。

1927年にはドーバー海峡を泳いで渡るという偉業を成し遂げ、その信頼性が世界に評価されたロレックスでしたが、一般人が買うには少々高過ぎたのですね。

そこでウィルスドルフ氏は、ロレックスのブランドイメージを崩さず、コストを下げた時計を製作販売できないかと考えた末、別ブランド・チューダーとして展開するという戦略に出たわけです。

ちなみにチューダーというブランド名は、当時ロレックスが拠点を置いていたイギリスの王家、チューダー家より取ったもので、イギリスで多くの人が馴染み深く使ってくれるようにという意味を込めたネーミングなのだそうです。

ブランド初期のバラのエンブレムも、イギリス王家の紋章からイメージしたものでした。

結果、ウィルスドルフ氏の戦略は見事にあたり、ロレックスの人気も合わせて上昇。今日の両ブランドを作り上げることに成功しています。

現在チューダーでは、レディ・ガガやデイビット・ベッカムなど、著名なセレブをアンバサダーに向かえ、ロレックスとは異なる独自の挑戦を続けています。

チューダープリンス

チューダー成功の歴史を紐解いていくと、魅力的なモデルがたくさん登場します。

チューダーの歴史が他のブランドの歴史と大きく異なるはそこで、もともとがロレックスの廉価版としての登場だったため、創業時からロレックスのパーツを使用できたことがこのブランドの強みです。

例えば創業初期、1952年に登場した『チューダープリンス』は、ロレックスのオイスターケースと、パーペチュアル機構という、2つの偉大な発明品をそのまま流用しての登場となりました。

また、その後1954年に登場したサブマリーナも、外装パーツがそのままロレックスのものであったため、面白いくらいにロレックスのサブマリーナと瓜二つです。このモデルの市販品は、アメリカ海軍でそのままの仕様で導入されるなど、デザインのみならず、信頼性もロレックスに劣らないことを証明しています。

このように、メーカーとしてあまり試行錯誤しなくても、そこはロレックスがしっかりやってくれていたという、恵まれた中で成長していった珍しいブランドなのですね。

ロレックス廉価版から独自路線への舵切

そんなチュードルが大きく舵を切ったのは1970年代。その頃にはロレックスの人気も上昇し、売れるようになっていたため、ロレックスの廉価版という位置づけではなく、チューダーはチューダーとして、独自の路線へと方向転換することとなります。

ロゴもこの時期にバラから盾へと変更されています。盾はチューダー家の家紋からイメージしたものであり、信頼性と堅牢性を象徴したものとして、取り入れられました。

かくして、新制チューダーは1969年に『オイスター プリンス サブマリーナ』を発表。そのデザインは、これまでのサブマリーナのイメージから一変。スクエア型のインデックスに、イカ針と呼ばれる形状の針を装備し、独自のデザインセンスを発揮しました。

後に『イカサブ』の愛称で親しまれるようになったモデルは、このモデルが起源なのですね。このモデルより、ムーブメントもETA社のものに切り替えられ、より量産体制が整えられていきます。1977年には、その信頼性と再現性の高さから、フランス海軍のダイバーチームおよび、将校、教官用の時計としても採用されています。

特徴的なイカ針は、現在も『ブラックベイ』や『ペラゴス』といった人気モデルで採用されています。

また、1970年代~1990年代にかけては、クロノグラフウォッチの開発も積極的に行われました。本家ロレックスのデイトナから数年遅れで登場した『オイスターデイト』という名のクロノグラフウォッチは、その特徴的なデザインがヒットし、現在も『ヘリテージシリーズ』としてリバイバルされています。

1976年には、『クロノタイム』というモデルが登場し、こちらはデイトナよりも早く、世界初となる自動巻きムーブメントを搭載したことで、世界中の時計ファンの心を掴みました。自動巻き機構を格納するため、ケースが厚めに作られたことから、コレクターの間ではビッグブロックという愛称で親しまれています。

ペラゴス、ヘリテージ、個性的な近代モデル

さて、ここまで見てきた感じ、過去、魅力的なモデル多数輩出し、特に苦労をした様子が見えないチューダーですが、今回歴史を調査していておやおや?と思った時代が一か所だけありました。

それが1990年代前半~2000年代後半までの約20年ですね。この時期は目立ったモデルのリリースがなく、ブランドとしての施策も思うようにはいっていなかったように感じます。

例えば、1998年にはタイガー・ウッズをアンバサダーとして起用し、コラボモデルを発売するも、タイガー本人の不調とともに時計の人気も低迷しています。

1999年には、ハイドロノートという、1,200m防水のダイバーズが登場しましたが、目立った人気は得られず廃盤となりました。

2009年にはポルシェコラボモデル。2011年にはドゥカティコラボモデルと、モータースポーツとの連携を図ろうとするも、こちらもあまり目立つ施策にはなりませんでした。

回りまわって現在はその時代のモデルも人気になっていますが、その時リアルタイムでは大きな話題にはならなかったという感じですね。

そんな低迷期?を抜け、後の人気シリーズとなるヘリテージシリーズが発表されたのは2011年。翌2012年のバーゼルでは、チタン製のケースを用いたプロダイバーズ『ペラゴス』が発表され、ブランドとしての人気を徐々に取り戻していきます。

チューダーの未来

現在は、2015年に自社製ムーブメントが完成したことで、より独自ブランドとしての地位を向上することに成功しています。もはやロレックスとの関連性を知らずに着けている方もいるのではないでしょうか。そのくらい、今はロレックスを感じさせない独立したブランドになっています。

2018年には正規店として日本に進出することとなり、大きな話題となりました。実はそれまでチューダーではなく、チュードルでしたよね。国内正規展開を機に、カタカナ表記を変えたというのは有名な話です。

これからも、ますます魅力的なモデルを発表してくるであろう、チューダーというブランド。ロレックスとは違った魅力、発見していきたいですね!