2021.04.12

魅力深堀り!ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ とはどんな時計なのか

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サムネ_オーヴァーシーズ

※この記事はウォッチ買取応援団としてYoutubeにアップした動画、「変化するアイコン!ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズに見るブランドらしさとは」の書き起こしです。

本日は、ヴァシュロン・コンスタンタンのラグスポウォッチ、 オーヴァーシーズのご紹介です。1996年に登場し、現在第3世代へと 続いている人気コレクション。 パテック・フィリップのノーチラス、 そしてオーデマ・ピゲのロイヤルオークと並ぶ、 3大ラグスポウォッチです。

目次

オーヴァーシーズ1

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

モデル名の通り、旅をテーマとした腕時計であり、 防水性・耐磁性など、現代の実用時計として 十分過ぎる性能も有しています。

現行モデルは、ワンタッチでベルトを交換できる インターチェンジャブルシステムを装備しており、 旅先で使用目的によって、気軽にベルト交換が 出来る点も魅力。 また、複雑機構から3針デイトまであり、 サイズの展開もレディース・兼用・メンズとあり、 選べる幅が広いことも魅力ですね。

と、モデルとして語る際には、 割とわかりやすいものではありますが、 実はここにはヴァシュロン・コンスタンタンという ブランドの「らしさ」も強く表れていること、 皆さんお気付きでしょうか。

改めてブランドの歴史を振り返り、 オーヴァーシーズというモデルに反映された アイデンティティがいかなるものなのか、 紐解いていこうと思います。

ブランドの歴史

では、まずはヴァシュロン・コンスタンタンという ブランドについて、簡単におさらいして いきたいと思います。 ブランドの創業は1755年。

1700年代に作られた時計ブランドは、 ブランパンやブレゲなど6社しかありません。 ヴァシュロン・コンスタンタンはその中の1つ、 世界最古と呼ばれるブランドの1つです。

オーヴァーシーズ3

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

ちなみによく並べられるブランド、 パテック・フィリップの創業は1839年。 オーデマ・ピゲの創業は1875年。 それよりも1世紀近く早くスタートした ということになりますね。

ブランドとして本格的に活動開始

ブランドとして本格的に活躍を始めたのは、 1800年代に入ってから。 創業者の孫にあたる天才時計師 ジャック=バルテルミ・ヴァシュロンと、 企業運営や営業活動に才覚を持った人物 フランソワ・コンスタンタンが出会ったことが きっかけとされています。

オーヴァーシーズ4

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

さらにそこに工作機械の製作に長けた人物 ジョルジュ=オーギュスト・レショーが加わり、 生産体制が整えられていきます。 こうして、時計師、営業マン、製造者が揃い、 世界3大ブランドへとのし上がって いったというわけです。

ブランドの歴史詳細については、過去動画にてご覧いただけますので ご興味がある方はこちらからチェックしてみてください ↓↓↓↓↓

オーヴァーシーズの特徴とは

そして、このヴァシュロン・コンスタンタンが、 1996年に発表したのが、 今回のピックアップモデル・オーヴァーシーズ。 ということで、その現行モデルを まずは見ていきたいと思います。

オーヴァーシーズ5

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

現行モデルの発売は2016年ですね。 オーヴァーシーズコレクションでは第3世代です。

ブランドサイトには、 “ 2016年に進化を遂げた 「オーヴァーシーズ」コレクションは、 見事な多様性で旅のスピリットを表現しています。 創始者の一人であるフランソワ・コンスタンタンから 受け継いだ世界へ通じる扉は、 創業以来メゾンの哲学の中枢を成しています。 “ とあります。

旅をテーマにした時計

オーヴァーシーズは旅をテーマにした 時計なんですよね。 そのため実用性能として、 150mの防水性能と耐磁性能を有しています。

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引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

工具無しでベルトの付け替えが可能なシステムも 非常に便利。 飛行機での移動中は 丈夫なメタルブレスにしておいて、 旅先でのディナーシーンではレザーベルトに交換。 さらにドライブなどアクティブなシーンでは、 ラバーベルトに交換する。 これが簡単に出来てしまうんです。

3大ブランドの時計で、 ここまで実用に重きを置いているものは、 他にないのではなかろうか。

3大ブランドの中でも実用に重きを置いた時計

ちなみに、ラグスポの元祖である オーデマ・ピゲのロイヤルオーク。 ベルトは一体型ですし、 防水性能は50mと控えめです。 またパテック・フィリップのノーチラスも ベルトは一体型。 防水性能は120mありますが、耐磁については 謳われておりません。

オーヴァーシーズ8

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

また、特徴的なべセルに目が行ってしまい、 見落とされがちですが、 文字盤の視認性も非常に優れています。 ブランドの得意技とされるラッカー仕上げの 艶やかな文字盤に、高めに設計されたマーカー。 そして、立体形状の時分針と、長く鋭い秒針。

クロノグラフ以外のモデルでも、 文字盤外周にカウンターレールが施され、 秒単位で読みやすい設計になっています。

こういった点も、ロイヤルオークやノーチラス には見られないポイントですね。 オーヴァーシーズとは、 利便性・性能・視認性の3つが揃った、 まさに実用のための時計として 設計されているんですね。

オーヴァーシーズの登場

さて、ではこのモデル。 どのように誕生したのでしょうか。 1996年登場ということで、 実はラグスポウォッチとしては元祖と言われる 世代のモデルではないんですよね。

ラグスポの走りとなったのは、 先ほどからちょいちょいお話している オーデマ・ピゲのロイヤルオーク。 そしてパテック・フィリップのノーチラス。 この2本になります。 2本とも1970年代に登場しています。

オーヴァーシーズ9

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

クォーツショック真っ只中の時計業界~1970年代~

1970年代というと、 腕時計業界はクォーツショック真っ只中。 機械式時計の需要が激減してしまった時代です。 そんな時代、機械式時計にしかできない 全く新しいジャンルの時計を作ろうじゃないかと。

オーヴァーシーズ10

引用:https://www.audemarspiguet.com/com/ja/home.html

オーデマ・ピゲそしてパテック・フィリップは、 鬼才と呼ばれた伝説の時計デザイナー、 ジェラルド・ジェンタ氏にデザインを依頼。 1972年にはロイヤルオークが。 1976年にはノーチラスがそれぞれ発売され、 機械式時計復活のカギとなりました。

3大ラグスポ

オーヴァーシーズ11

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

オーヴァーシーズはというと、 その1970年代組ではありません。 なのに、なぜ今3大ラグスポと呼ばれているのか。 ひとつは単純にヴァシュロン・コンスタンタンが 3大ブランドだからというのはありますが、 他になにか別のモデルはなかったのでしょうか。 実は、あったんですよ。 1970年代のヴァシュロン・コンスタンタンにも。

オーヴァーシーズの原型222とは

それがこちらの時計。 222というモデル名で、 ブランド創業222周年を迎えた 1977年に登場したモデルです。

オーヴァーシーズ12

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

今のオーヴァーシーズとは、 デザインが全く違うものですよね、これ。 デザイナーは、ヨルグ・イゼック氏。 ブレゲのマリーンや、クレドールのエントラータを 手掛けた人物ですね。

その方がデザインしたものですが、実はこれが オーヴァーシーズの原型と言われています。 にしても、なんで?どこが? と思ってしまうくらい違うんですよね。笑

初代モデルから、ほぼほぼ変わらないデザイン

そう思ってしまうのは、やはりロイヤルオーク そしてノーチラスが不変だからなんですよ。 どちらも初代モデルから、 ほぼほぼデザインは変えられていません。

オーヴァーシーズ13

初代ロイヤルオーク 自社撮影

 デザイン面で変わったのは、 ケースの構造が2ピースから3ピースになった ことで、若干見た目が変わったくらいなもの。 裏蓋がシースルーになったりとか、 ベゼルが厚くなったり薄くなったりとか。 ベースとなるデザインは、 70年代から変わっていないんですよね。

オーヴァーシーズ14

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

そこにオーヴァーシーズ。 この原型は222だよと言われても 全くピンとこないわけです。 文字盤デザインも違うし、 ベゼルの形状も違うし、 ブレスレットのコマ形状も違う。 共通デザインを探す方が難しい、、、

唯一素材が当時高級時計としては まだ目新しかったステンレススチールを 用いていたこと。 それをモノブロック構造のケースで仕立てて、 防水性能を確保していた点は、 旅時計の走りだったのかもしれません。

オーヴァーシーズ15

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

果たしてこれは本当に原型か。 オーヴァーシーズの元祖と呼んでいいのだろうか。 その答えは、ブランドサイトに記してありました。

“ この象徴的なモデルは40年以上にわたり ヴァシュロン・コンスタンタンの中でも 最も有名なデザインのひとつとなり、 他の有名なデザインである 「オーヴァーシーズ」コレクションにも ヒントを与えています。 “

つまり、オーヴァーシーズではありませんよと、 ハッキリ言っているんですよね。 ヒントを与えたとあるので、 原型という表現は間違っていないものと思います。

オーヴァーシーズ16

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

実はこのオーヴァーシーズというモデル、 いろいろな誤解があります。 まあ、そこが面白い所でもあるんですが。 やれジェンタデザインだとか、 初代モデルは1970年代だとか、 現行モデルもジェンタデザインなんだとか。

ヴァシュロン・コンスタンタン自体あまり多くを語る ブランドではないので、そういったいろいろな誤解 が生まれてしまうのでしょうね。 こんな感じで、ヴァシュロン・コンスタンタンの話を していると、いつも話題がいろいろな方向に 飛んでいってしまいます。 過去お送りした歴史動画も然り。 デザインについてまとめた動画も然りです。

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引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

分かりやすくまとめてお伝えするということが、 もっとも難しいブランドだと思います。 それくらい変化のスピードが早く、手数が多い。 260年以上もの間、 スピーディに変化し続けているが故、 共通点を見つけてこういうブランドですと言い切る ことができないんですよね。 それこそがこのブランド最大の魅力とも 言えるわけです。

そして、無理くりこのタイミングで オーヴァーシーズというモデルの魅力に 話を戻すわけですが、 このスピード感のある変化。 オーヴァーシーズの魅力も、 まさにここだと思います。

モデル進化の系譜

先ほどの222というモデル。 ブランドサイトでは、 オーヴァーシーズのヒントになったとありました。 仮に222を原型として、調べてみたところ、 そこからから現行のオーヴァーシーズまで、 5回に渡るモデルチェンジが行われていることが わかりました。

まず現行モデルのオーヴァーシーズ。 登場は2016年。

オーヴァーシーズ19

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

その前のモデルはというと、2004年に登場した 第2世代のオーヴァーシーズです。 デザイン面での現行との大きな違いはベゼル。 現行モデルは、マルタ十字の腕の部分を模した 突起が6本ですが、第2世代は8本でした。

オーヴァーシーズ

自社撮影

また、分かりにくいけど大事なポイントとしては、 その突起デザインの下層部分。 第2世代は、8本突起のみのベゼルですが、 現行モデルはというと、 6本突起の下層にラウンド型のプレートが1枚 入っているんですよね。

これは、ケース形状がトノー型に近いことから、 ラウンド型に見せるための工夫なのだとか。 ラグからブレスレットへの流れも、 より自然にマルタ十字デザインのコマへと繋がる 形状に進化しています。

オーヴァーシーズ20

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

それ以前は1996年登場の第1世代。 第1から第2、ここでの大きな変更は、 ブレスレットのコマ形状です。

現行同様にマルタ十字デザインのコマを 用いていた第2世代。 対して第1世代では、四角形のコマが連なった形状 のブレスレットを使用していました。

と、ここまでで既にかなり変わっていることが お分かりいただけるかと思います。違うモデルですと言われたら、 素直に、ですよね!と納得できるレベル。 所々似てはいるけど、同じではない。

ロイヤルオークにしてもノーチラスにしても、 またはロレックスのサブマリーナーにしても、 歴代のものを見比べると、 文句なしに歴代じゃないですか。 どの時代のものを見ても、 サブマリーナーはサブマリーナーなんですよね。

が、オーヴァーシーズはどうでしょう。 オーヴァーシーズ、、、なのか? といった感じです。

オーヴァーシーズ22

続いて、オーヴァーシーズ以前のモデル。 1989年にフィディアスというモデルが 存在していました。 ここからは、モデルそのものが違うので、 違いを探すよりは、共通点を探す方が 良いかもしれませんね。

でいうと、 先ほどの第1世代オーヴァーシーズとの共通点、 四角形のコマを連ねたブレスレットのデザイン。 これほど特徴的なブレスレットは他にありません。 コマの幅や配置は異なるものの、 第1世代オーヴァーシーズのブレスレットは、 間違いなくこれが引き継がれたものでしょう。

そしてその前。 1984 年には、333というモデルがありました。 333という名称は、222の後継だからでしょうね。 333周年ではありませんので。 フィディアスと333、ここもモデルが異なるので、 共通点で見ていきますと、、、 ブレスレット一体型であることくらいか?

これから先ほどのフィディアスに変わった 流れが読みにくいですね。 フィディアスはラウンド型のケースに、 四角コマのブレスレット。

オーヴァーシーズ23

一方333は、8角形のケースに、 6角コマのブレスレット。 333とフィディアス。 いろいろ調べては見たものの、 ここがどうにも繋がらない。

我々常人には理解不能な共通点がきっと あるのでしょう。 ないにしても、あると思わせてしまうのが、 ヴァシュロン・コンスタンタンの変化力です。

そして333と222。 ここはブレスレットの形状が同じですね!

進化の系譜から見えるヴァシュロン・コンスタンタンらしさ

といったところで、オーヴァーシーズの系譜、 改めて見てきたわけですが、 ここまでまとめてみて感じたことは、 222というモデル、やはり「ヒント」という 表現が正しいと思いました。

オーヴァーシーズ24

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

 222からオーヴァーシーズへと、 直接繋げようとすると繋げにくいのですが、 間に333そしてフィディアスというモデルが 入ることで、大胆ながらも自然な変化のように 見えてきます。

そしてオーヴァーシーズになってからの 2度のモデルチェンジ。 ここも初代と現行を繋げようとすると無理がある。 しかし、第2世代があることで、自然に見えてくる。

ヴァシュロン・コンスタンタンがもつ 「ブランドらしさ」。 非常に言語化しにくいこのテーマは、 オーヴァーシーズというモデルにおいても 確実に感じ取ることができるのではないでしょうか。

オーヴァーシーズ25

引用:https://www.vacheron-constantin.com/jp/home.html

以上、本日はヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズについて、お送りいたしました。 変化のスピードと大胆さは、まさに異次元。 それでもアイコンウォッチと感じさせてしまうのが、 ヴァシュロン・コンスタンタンの凄さですね!

次のモデルチェンジ、 一体どんなデザインになるのだろうか? 全く予想できません!笑

楽しみにしていければと思います。

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